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2017.09.25 議会改革

第15回 問われる議員定数・報酬 ――住民自治の進化・深化の視点から考える――(上)

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1 議員定数・報酬を考える2つの視点と5つの原則

 新たな議会を作動させるには、それを支援する条件が整備されていなければならない。議員定数・報酬・政務活動費にとどまらず、議会事務局、議会図書室にまで議論は及ぶ。今回は、定数・報酬を中心に議会の条件整備を考えていきたい。
 まず、議会事務局、議会図書室を含めた議会の条件整備を考える上での2つの視点を確認したい。

(1)議会の条件整備を考える上での2つの視点
① 行政改革の論理と議会改革の論理の相違
 「議会改革をやっています。まず定数の削減から始めました」。最近では少なくなったが、数年前に時々聞かれた議員の声である。がく然とすることがよくあった。行政改革は効率性を重視し、削減を優先させる。それに対して、議会改革は地域民主主義の実現である。住民自治をどのように創り出すかということから出発しなければならない。定数・報酬を考える場合も、あくまでも住民自治を充実させるための条件として議論しなければならない。また、この議会改革が執行機関の行政改革を促進することを改めて認識すべきである。
② 持続的な地域民主主義の条件確立の必要性
 定数・報酬を考えることは、新しい議会を創り出すために必要である。これは現在の議会のためだけではなく、多くの多様な住民が将来議員になりやすく、また活動しやすくする条件であり、持続的な地域民主主義の条件として考える必要がある。「住民の声の実現」として削減にまい進する議会・議員は、将来を見据えれば住民に対する背信行為となる場合があることを自覚すべきである。

(2)議員定数・報酬を定める際に考える5つの原則
 こうした議会の条件整備を考える上での2つの視点を前提に、定数・報酬の考え方を確認しておきたい(江藤 2012、江藤・自治体学会議会研究ネットワーク 2015)。定数・報酬を考える上での5つの原則である。
① 自治体のポリシーで決める
 答えのないテーマであり、自治体がそのポリシーを示す必要がある。議員定数は、従来自治体の人口規模で決まっていた。その後、法定上限数に改正され、今日ではそれも撤廃され、それぞれの自治体が自らの責任で決めることになった(自治法90)。また、そもそも報酬は(一般的には特別職報酬等審議会の答申を経て)条例で定めることになっている(自治法203)。したがって、それぞれの自治体、とりわけ議会がそのポリシーを示さなければならない。
② 議員定数と報酬は別の論理
 「議員定数を半分にして、報酬を増額する(例えば2倍)。そうすれば、若い人も議員になれる」。議会費を一定とした想定からこうした提起が行われる。気持ちは分からなくはないが、また一時的に住民の納得を得ることも可能かもしれないが、「そもそも定数や報酬の根拠は何か」、という問いが発せられる。それぞれを独自に説明しなければならない。
③ 住民の支援を考える(政策提言・監視にかかわる住民)
 定数・報酬を増加できない、あるいは削減する場合は、住民による支援が不可欠である。本来、財政的問題から定数・報酬を考えるべきではないが、どうしても危機的状況から考えなければならないこともある。増加させたくともできない、あるいは削減せざるを得ない場合もないわけではない。この場合には、議会力をダウンさせないために、議会事務局の充実や、住民と議員とが一緒になって地域課題について調査研究するなど(長野県飯綱町議会など)、住民による政策提言・監視の支援を制度化すべきである。
④ 住民とともに考える(シンポジウム開催、審議会等)
 住民とともに考える定数・報酬。これが必要なのは、住民からの批判が多いテーマへの説明責任という意味がある。それ以上に重要なことは、定数・報酬は新しい議会運営の条件であり、さらにその議会運営は住民自治に不可欠なものである。つまり、住民自治の問題であるがゆえに、定数・報酬を住民とともに考えなければならない。議会は住民自治を進める視点で住民と語る必要がある。専門家などを含めた第三者機関による提案を素材とすることも有効である。
⑤ 変更する場合、十分な周知期間が必要
 「後出し」ではなく周知するのに十分な期間の必要性を認識する。定数・報酬は、住民が議員に立候補する際に考慮する重要な条件である。それを、選挙半年前に削減することは、現職議員の都合で決める、じゃんけんの「後出し」のようなものである。2年前、遅くとも1年前には周知できるように準備を進めるべきである。

 以上、議会の条件整備を考える上での2つの視点と、定数・報酬を定める際に考える5つの原則を明示した。こうした条件整備は議員だけの問題ではなく、住民の問題でもあり、住民それぞれが立候補し活動するための条件として考える必要がある。

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