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2017.09.11 議会運営

第3回 委員会運営

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弁護士 太田雅幸

 今回は、前回に引き続き、委員会運営について、ややロジスティクス的な部分を中心にお話しすることとします。

1 事前準備

(1)調査計画
 百条委員会は、付託された議案をほぼ定型的な段取りで処理する常任委員会と違い、証人尋問のほかに多様な選択肢を有し、着地点も手探りで、かつ、委員は、めったにない活動であるがゆえに土地勘がありません。そこで、長丁場に流れがちな調査の進行について、委員全員で事前に協議しておくことが必要です。ここで取り決めておきたい事項は、次の点です。

① おおよその開催の回数
 委員会の開催回数は、控えめに設定し、本当に必要があれば、追加で開催するのが適当です。というのも、百条委員会は、普段の一般質問の習い性で、調査案件以外の事項(常任委員会で追及すべき行政案件)に拡散していきがちです。そうでなくとも、何かよい証拠はないかと手当たり次第の探索的な調査になることもあります。機会が与えられれば、使いたくなるのも人情です。しかし、熱心な傍聴人からは「何をだらだらやっているのかねぇ……」という指摘もされているのです。このような有様では、百条委員会の権威も失われていきます。

② 問題点に関する認識の共有
 調査案件のどの部分の解明が必要か、適時に問題点を洗い出し、委員間で共通認識を持つこと、混乱しそうな場合には、時系列表(調査対象である事象の前後に生じた重要事実を時間の順番に記載したもの)を作成し、共有することが重要です。
 例えば、自治体の外郭団体とその事業の委託先(株式会社)との間で締結された格好の委託契約書、実際のところは締結されていなかった契約書を、日付をバックデートして締結していたことにした――そうしなければ、その外郭団体の法令遵守が問われるためになされた細工であったという事実が判明したとしましょう。これに対し、私文書偽造だと息巻く委員――。しかし、当事者が合意の上で締結した以上、偽造ではないでしょう。問題があるとすれば、自治体当局がこの操作に関与したのかどうかで、その点を解明すべきであり、委員はこのような冷静な指摘をするべきです。
 そして、このような分析作業は、委員長の命を受けて事務局が執り行い、開催期日ごとに行う個別準備の機会等で委員の質問に対し説明をさせるのが適当です(要するに、縁の下の力持ちの担当分野なのです)。ただ、委員と事務局の事実上の力関係によっては、事務局の適切な分析結果が委員の理解を得られないことも生じます。このような場合に備え、その自治体に利害関係のない学者や弁護士を議会アドバイザーとして委嘱し、本項の事務に携わってもらうことは非常に有益です。というのは、このような人たちは、執行部の(特に首長部局の)人事権の下にないので、ずけずけとものを申すことができ、かつ、第三者的な立場から冷静に発言できるからです。

(2)開催期日ごとの個別準備――尋問準備
 常任委員会でも期日ごとに事前に進行協議をしますが、当否は別として、答弁調整もされ、比較的予定調和的に行われる場合には、質疑者、順番、持ち時間の確認等の形式的なものです。
 これに対し、百条委員会の期日ごとに実施する事前協議は極めて実質的なものである必要があります。特に、証人尋問の次第を詰めるのです。通例、尋問においては、委員長が基本的な尋問をし、他の委員が補充的に尋問をすることが多いはずですが、ぜひ時系列表を記載して個別の証人ごとの尋問事項の概略を示した手控えを作成の上、委員に配付して、基本的な尋問で尋ねることにつき認識を共有しておくべきです。委員の中には、その後の補充的な尋問において、基本的尋問ですでに証言を得ている事項について重ねて尋ねる者もありますが、これでは尋問手続が緩んでしまいます。補充尋問については、証言が曖昧で、又は首尾一貫しておらず矛盾しているのに委員長が追及し損ねた部分の尋問等、比較的限定的なものとするなど、役割を決めておくのが適切です。

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