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2017.08.25 議会改革

第13回 議会からの政策サイクル(上)――議会改革の本史とその第2ステージ――

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(2)議会は「住民自治の根幹」
 これら3つの新たな議会運営の原則は、それぞれの自治体の思いつきではない。地方自治の原理がこれらの原則を生み出している。地方自治は、国政と同様に政府(代表制、自主的な権限財源)を有しているが、それらには大きな相違がある。すでに確認している事項ではあるが、重要な論点なので再確認しておきたい。
 国政における議会は二院制であり(世界中では一院制の方が多い)、国民代表制(一度選出されれば、国民全体の代表となる(議員の良心に基づき考え行動し表決する)=リコール制度はない)を採用しているのに対して、地方自治では議会は一院制である。住民がチェックするからであり、だからこそリコール制度をはじめ多様な直接民主制が導入されている。ここから、住民とともに歩む議会、住民参加を様々に導入する議会が登場する。
 また、二元制(議員とともに首長を住民が直接選挙)を採用していることを考慮すれば、議会は首長と政策競争をすることになる。癒着でも激しい対立の恒常化でもない。また、首長等とは異なる立場から議会の意思を示す必要がある。そのためには、質問・質疑の場となっていた議会を議員間(そしてそれらの首長等との、また住民も参加する)の討議空間に再編する必要がある。
 このように、新たな議会像は地方自治の原理に由来している。とはいえ、中央集権制に基づく地域経営においてはそれが開花せず、ようやく地方分権時代に地域経営の自由度が高まることで開花した。
 なお、地方自治の原理は新たな議会像を要請するが、同様に議会が有する議決責任の自覚は新たな議会運営を求めている。議会には地域経営における重要権限がほとんどすべて付与されている。会期の最終日に議決されている事件(事項)を考慮すればよい。条例、予算・決算、市町村合併などの重要事項、そして契約や財産の取得処分(以上、自治法96①)、そして地域経営の軸である総合計画(自治法96②の活用)等にまで及んでいる(表2参照)。

表2 主要な地域経営手法(条例・財政・総合計画)への議会のかかわり表2 主要な地域経営手法(条例・財政・総合計画)への議会のかかわり

 このような「驚くべき権限」が付与されているのは、議会には次のような特徴があるからである。すべて合議制=議事機関に由来している。①多様性(様々な角度から事象にかかわり、課題を発見できる)、②討議(議会の本質の1つ:論点の明確化、合意の形成)、③世論形成(公開で討議する議員を見ることによる住民の意見の確信・修正・発見)、といった特徴を議会は持つ。
 だからこそ、議会は「住民自治の根幹」といわれる(第26次・第29次地方制度調査会答申)。つまり、これらの特徴によって万国共通、議会に地域経営の権限が付与されている。
 逆にいえば、この議会権限を全うすることに議会の真骨頂はある。この責任の自覚が議会改革を進める。議決責任は、説明責任を伴う。単に「可決しました」、「否決しました」ということを示すことは、報告であって説明ではない。この責任を全うするためには、質疑だけではなく議員間討議が不可欠である。それを効果的に作動させるには、独善性を排除しなければならず、そのためには一方で調査研究が必要であり、他方では住民との懇談が必要である。ここに、新たな議会運営(3原則)がすべて結実している。つまり、議決責任の自覚は、新たな議会を創り出す。

☆キーワード☆
【議決責任と説明責任】
 議決責任の再確認は新たな議会運営を伴う。それを行うには、説明責任を意識する必要がある。その説明責任を全うするためには、「首長による説明義務」が不可欠である。政策は絶対的に正しいものはなく、ベターを選択するしかない。その際、アングルを変えることでベターな政策は変わる。独自か、自治体連携か、住民・NPO・企業の関与の有無、類似政策の有無、補助金の有無、法令等の規律密度、といった論点の組合せによってベターな政策は変わる。「首長による説明義務」として、予想されるコスト、類似政策、総合計画における位置付けとともに、「政策等の発生源」、「検討した他の政策案等の内容」を説明させる(栗山町議会基本条例6)。首長による提案からこぼれた政策案の中に、よりよい政策がある可能性があるからである。議会は、それら全体を比較しベターな政策を選択する(時には、よりよいものを議会側から選択する)。

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