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2017.08.25 議会改革

第13回 議会からの政策サイクル(上)――議会改革の本史とその第2ステージ――

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山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授 江藤俊昭

今回の論点:議会改革の第2ステージの中心的な課題である「議会からの政策サイクル」を検討する

 最初の議会基本条例が北海道栗山町議会で制定(2006年5月)されてから11年が経過した。その意義の確認とともに、次のステップを模索する必要がある。全国の議会における議会基本条例の制定状況は、まさに「バクハツ」であるといえる。1つは、制定自治体数の急増である。徐々に改良が行われ、議会間の「善政競争」が生み出されている。もう1つは、二元的代表制(機関競争主義)に基づいて、従来とは全く異なる議会運営が宣言されたことである。住民とともに歩む議会、議員間討議を重視する議会、それらを踏まえて首長等と政策競争をする議会である。
 その議会改革を次につなげたい。議会基本条例等に規定された議会運営のルール、いわば形式は、議員にとっては多大な努力の賜物(たまもの)であることは重々承知しているが、住民からすれば「当たり前」のことである。それを「住民福祉の向上」の実現につなげたい。議会改革自体が目的ではないからだ。
 新たな議会運営のルールを制度化した議会基本条例の制定をもって、議会改革の本史への突入と考えている。それを住民福祉の向上につなげることが「議会改革の本史の第2ステージ」である。その中心が“議会からの政策サイクル”である。
 “議会からの政策サイクル”の重要なポイントは、議会運営の連続性を創り出すことである。従来の定例4回の会期での活動では、閉会中はほとんど活動せず死んでいるとはいわないが「寝ている状態」、つまり監視や政策提言の役割も果たせない。結局、首長からの提案の追認機関にならざるを得ない。そこで、1年間(正確には4年間)を通じて連続的に活動することが不可欠である。
 今回、次回と議会改革の第2ステージの中心的な課題である「議会からの政策サイクル」を検討する。
 ① 議会改革の本史とその第2ステージを確認する。
 ② 議会運営の連続性の重要性を検討する。
 ③ 議会改革の第2ステージの中核をなす議会からの政策サイクルの要素を確認する。
 ④ 議会からの政策サイクルの課題を検討する。

1 議会改革の本史への突入

(1)議会改革の金字塔としての議会基本条例
 議会基本条例制定の最も大きな意義は、新たな議会像を宣言したことである。閉鎖的な議会から住民に開かれ住民参加を促進する住民と歩む議会、質問・質疑だけの場から議員間討議を重視する議会、それらを踏まえながら追認機関ではなく首長等と政策競争をする議会、という3つの原則である。まさに、従来の議会運営とは一線を画すものである。新たな議会運営の宣言について、筆者は議会運営のコペルニクス的転換、あるいは議会改革は本史に突入したと特徴付けている。栗山町議会の議会基本条例は、確かに議会改革の金字塔ではあるが、普遍的な議会像であるために多くの議会もそれに続くことになる。
 その制定によって、議会改革の本史に突入したと断言したが、それ以前は議会活性化という名称が多く用いられていた。具体的には一問一答方式、対面式議場の導入、委員会の公開・要点筆記の公開等を想定するとよい。今では「これが改革……」と思われるものまで、活性化として20年も30年も同じようなことが提案され、徐々にではあれ実践されてきた。こうしたことは、議会改革(議会活性化)の前史である。それは、中央集権体制下で議会の役割が位置付けられず、そうであっても頑張ろうとする議会が改革の道筋をつけた。それが前史における改革である。
 時代が変わり、地方分権改革の中で議会の役割が問われてきた。それに真摯に対応したのが栗山町議会を先駆とする議会である。したがって、議会改革の本史は、地方分権改革の申し子であって、栗山町議会に限定されるものではない。より正確にいえば、栗山町やその他の自治体は、平成の大合併の嵐の中で新たな住民自治、新たな議会運営を考えざるを得ない状況だった。このように、議会基本条例は全国に広がる要因があった(表1参照)。そして、それぞれの議会の創意工夫によって議会基本条例は豊富化された。かつて、住民参加や協働といえば、行政との関係が問われるだけで、議会は蚊帳の外に置かれていた。それを転換させるべく、住民と歩む議会を明確にしたのが議会基本条例である。

表1 議会改革と住民との関係表1 議会改革と住民との関係

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