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2017.07.10 政策研究

第2回 百条調査権の課題

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【事例2】
 市の外郭団体が市から市有地の使用許可を受けて、夏季のイベントを開催することとなった。そのイベントに必要な仮設建物が建築基準法に違反していることが発覚したが、是正されないまま、営業が終了した。このイベントは、市内の会社が発案して、上記外郭団体に持ち込んだものであって、外郭団体から当該会社に業務委託がされている。そして、当該会社の社長は、市長の後援団体の有力者であることが判明した。市長から担当課に事実確認の電話が入れられていること等からも、市長が圧力をかけたのではないか、担当課は市長の意向を忖度(そんたく)して指導や処分を差し控えたのではないかとの疑いが生じた。

 建築規制行政のあり方が意図的にゆがめられたか、それとも事案を放置して規制措置の発動を怠ってしまったにとどまるのか。前記事例1と同じように、百条委員会は、間接事実を積み重ねて真実を見いだそうとするでしょう。すなわち、市長と社長の関係、市長に対する寄附の存否、この企画に関する市長と社長の打合せの存否、建築基準法違反に関する会社の認識、当局が違反を認識した経緯、当局が違反を確認してから営業を終了するまでの会社とのやりとり、建築基準法違反の個別案件については、通常いちいち市長への報告をしないはずのところ、本件に関し担当課等から市長に報告がされたのかどうか、他方、市長から担当課への報告の求め、このイベントによる収益状況(うまみのある事業であるか否か)等を調べ、社長が市長と結託してうまみのある事業を受託したが、建築基準法違反をしてしまうに及び、市長に泣きついて手心を加えてもらった……という絵が描けるかどうか、を検討するはずです。議員が行うこのような間接事実の積み重ねの巧みさには、時として舌を巻くほどです。
 では、百条委員会が市長の後援団体の収支状況一般(翻って、市長の政治資金には問題がありそうだ)や、当該会社の経理の不明朗性(うさんくさい会社ではないか)について調査するというのはどうでしょう。百条委員会は、当初の調査を契機として浮上した市長周辺の諸問題を取り上げたくなる誘惑に駆られるということもあるでしょう。しかし、建築規制行政のあり方の是非につき間接立証となるであろうかという観点から考えるならば、百条委員会でそういった収支状況や経理の不明朗性まで調査することができないということは自明のことです。
 万が一、上記のようなことがあれば、議会事務局は、百条委員会の委員が調査目的から外れて漂流することをひやひやしながらみつめ、あまりに逸脱がひどいときは、委員長に耳打ちをします。これは、百条委員会の調査は、議会から付与された事項に限定されるという原則があるからです。実務的なことを付け加えると、このような逸脱は、本丸に迫ることができないための苦しまぎれの調査の感が否めず、執行部や市民の失笑を買うかもしれませんし(百条調査に対する住民の支持を失うことにもなりかねません)、何よりも、調査が横道にそれることで得をする者がいるかもしれないからです。

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