2017.07.10 政策研究
第10回 7つの予算原則
1 予算原則とは
自治体は様々な行政活動を行っているが、それに伴い予算も複雑多岐にわたる。一方で、予算は明確かつ民主的であることが求められており、このためいくつかの予算原則が設けられている。具体的には、次の7点である。
① 総計予算主義の原則
② 単一予算主義の原則
③ 予算統一の原則
④ 予算事前議決の原則
⑤ 会計年度独立の原則
⑥ 予算単年度主義の原則
⑦ 予算公開の原則
2 総計予算主義の原則
(1)総計予算主義の原則とは
総計予算主義の原則とは、一会計年度における一切の収入及び支出を、すべて歳入歳出予算に計上しなければならないとする原則。地方自治法(以下「自治法」という)210条には、「一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない」とあり、総計予算主義が規定されている。
仮に、この原則に基づかないと、ある事業の歳入と歳出を差し引き(相殺し)、必要な額のみを計上することになる。例えば、「保育園運営事業は、全体として歳出は5億円だけれど、保護者から入園料や保育料として1億円の歳入があるので、差し引き4億円を歳出予算に計上すればよい」というようなことになる。
こうした方法は、純計予算主義という。相殺した歳入予算だけ、若しくは歳出予算だけを計上する。しかし、これでは事業の全体像を把握することができない。一切の歳入歳出を予算に計上することにより、予算を通じて歳入歳出の実態が明らかになり、予算の全体像を明らかにすることができる。これによって責任も明確となるため、この総計予算主義が用いられている。
(2)総計予算主義の例外
総計予算主義の例外としては、一時借入金の収支、決算剰余金の基金編入、基金の繰替運用などがある。
一時借入金の収支については、歳計現金の不足を補い、年度内に償還することから予算に計上しない。ただし、利子のみを予算計上することがある。
決算剰余金の基金編入については、決算剰余金を生じたときは、条例又は議決により、その全部又は一部を繰越手続を経ず、そのまま基金に編入することができる。
基金の繰替運用については、条例の定めにより、歳計現金の不足を基金に属する現金で補うものである。利子のみを予算計上することがある。
3 単一予算主義の原則
(1)単一予算主義の原則とは
単一予算主義の原則とは、予算は単一の見積表にすべての歳入歳出を包含させ、かつ予算の調製は一会計年度1回を適当とする原則のこと。
これは、自治体の財政全般についての見通しを可能にし、統一的・計画的な財政運営を行うために設けられている原則で、これにのっとり、毎年度開始前に一会計年度を通じて定められる当初予算を自治体は調製することになる。
(2)単一予算主義の原則の例外
しかし、この単一予算主義には多くの例外がある。それは、自治体の業務が複雑多岐にわたるため、複数の会計に区分した方が適切な場合があり、特別会計を設置したりする。また、予算編成も当初予算だけでなく、補正予算が編成されることから、予算の調製は必ずしも1回とはなっていないのが実情である。
単一予算主義の原則の例外としては、特別会計、公営企業会計、補正予算、暫定予算がある。