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2017.06.12 政策研究

【フォーカス!】プレミアムフライデーの二の舞い?

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

動くか、キッズウイーク

 安倍政権が「キッズウイーク」の導入に向けて動き出している。夏休みなどの一部を地域ごとに分散させ、休みの日に子どもが親と一緒に旅行に行きやすいようにするというのがうたい文句だ。むろんその裏には、家族旅行に出かけてもらい、観光振興にも役立てたいという思惑もある。その点では、民主党政権下で実験的に実施された休日の分散化と同じだ。2018年度からの導入を目指すが果たして成果は上がるのか。

狙いは経済活性化

 教育再生実行会議が6月1日、安倍晋三首相に手渡した第10次提言「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子どもを育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」で提唱された。
 
 この中では「家庭、地域の教育力の向上」の方策として「家庭における子どもと向き合う時間の確保-地域ごとの学校休業日の分散化」を提案している。この中では「国、地方自治体、学校、産業界等は、地域ごとに学校の夏休みなどの長期休業日の一部を学期中の平日に移して設定する学校休業日の分散化の推進や設定した休業日における多様な活動機会の充実を図る」ことを求めた。さらに経済関係の行政機関や産業界の団体に対しては「連携・協力して学校休業日に合わせた保護者の有給休暇の取得を強力に促進する」とある。
 
 夏休みを5日程度短くし、別の週、地域ごとに異なる週を設定して平日の月~金までを休みにすれば、土日も含めて計9日間の休みができる計算だ。
 
 この発想は、政府の文章のほかのところでも花盛りだ。6月2日の経済財政諮問会議で示された「経済財政運営と改革の基本方針2017(素案)」でも、観光・旅行消費の活性化の項目に「大人と子どもが向き合う時間を確保するため、2018年度から地域ごとに『キッズウイーク』を設定し、学校休業日の分散化、有給休暇取得の促進、休日における多様な活動機会の確保の取組を官民一体として推進する」とある。
 
 当然、成長戦略となる「未来投資戦略2017」、「観光ビジョン実現プログラム2017」にも同趣旨の記述がある。狙いは観光であり、経済の活性化であることは明白だ。

何でもあり

 安倍首相はも「政府として取り組みを進めたい」「企業でも有給休暇取得を促進するなど官民挙げて働き方改革をさらに進めることが大切だ」と強調、前向きな姿勢をアピールする。

 経団連の榊原定征会長も5月22日の記者会見で「学校がカレンダー通りだと、家庭で長期休暇を取るのが難しい」と指摘し、「年に2回ぐらいは8~9連休できるようにしてほしい」と語り協力を約束している。

 このように政府も経済界も導入には前向きだ。2020年の東京五輪の年には名目国内総生産(GDP)600兆円を達成するには、2016年のGDP536兆円から10%以上の上乗せが不可欠だ。達成のため「できることは何でも」という発想に立ってキッズウイークを導入したとしても不思議ではない。だが、実際に効果があるかとなると、疑問符が付く。

 安倍政権が蛇蝎のごとく嫌う民主党政権下では「休暇の分散化」として2012年度の導入を目指したことがある。イメージはより具体的だ。全国を「北海道・東北・北関東」「南関東」「中部・北陸信越」「近畿」「中国・四国・九州・沖縄」の五つのブロックに分けて5~6月は南から、9~10月は北から順に1週間ずつずらして月火水の3連休を設定する。土日を含めて5連休が可能になる。「成人の日」など6つの休日を「休日でない記念日」として年間休日数は変えない。

 当時のゴールデンウイークとシルバーウイークの国内旅行消費総額の合計は2兆8000億円。これを分散化することで渋滞緩和によって日帰りや宿泊の旅行者が増え、新たに2兆9000億円分の旅行消費が生まれると政府は試算していた。
効果としては、①連休の分散化によって渋滞が緩和され新たな旅行を呼び込む、②旅行需要が平準化されることでホテルなどの経営が楽になり正社員を増やすことができる、③ピーク時に合せた道路や鉄道のスペックを低くすることが可能になり効率的な社会資本整備につながる―などのメリットがあるとされた。

 だが、地域ごとに休日が異なれば、取引先の都合に合わせて休日でも出勤が必要になるなど、旅行業界以外のメリットがあまり見えない。このため中小企業を中心に反対が根強かった。さらに2011年に東日本大震災があったことから、導入は立ち消えになった経緯がある。

協力頼み

 安倍政権の具体案はまだ示されていないが、子どもの休業日に合せて親が有給休暇を取る仕組みが前提だ。子どもがいる家庭が優先して休暇を取れば済む話なので、民主党時代の分散化よりは理解は得やすいだろう。

 だが「本当に親は休めるのか」となると、これは企業の協力次第となる。同じ学校の通っていても、親と過ごせる子どもと、サービス業を中心に親が休めない子どもの両方がいる。片親とか家庭の事情もある。キッズウイークを迎える多くの子どもの気持ちを考えれば、学校の先生も難しい対応を迫られるだろう。

 どれだけ休む人が出るかは、経済界の取組次第となる。月末金曜日の仕事を早く切り上げる「プレミアムフライデー(プレ金)」は2月24日にスタートしたが、参加する企業は数パーセントほどしかなく、効果は上がっていない。呼び掛けに頼る政策には、当たり前だが限界がある。プレ金の二の舞になるのでは。そう考えるのが順当だろう。
 

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