2017.06.12 議会改革
第53回 町村総会/立候補制における投票の効力
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
町村総会
高知県大川村において町村議会の代わりに町村総会とする検討が始まったが、町村総会とはどのようなものか。またその運用はどのようにすべきか。
地方公共団体には憲法93条1項に基づき法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置することが義務付けられている。これを受け地方自治法(以下「法」という)89条で議会の設置規定が設けられており、これが地方議会設置の根拠となっている。地方公共団体においては長と議会の二元代表制によりそれぞれを住民が直接選挙して間接民主制により当該地方公共団体の行政運営がなされる。
この法89条の例外規定として法94条に定める町村総会があり、直接民主制による地方公共団体の1つの議事機関としての形態であるといえる。
町村総会とは法94条に基づき地方議会を設けることなく、当該町村において選挙権を有する者が集合し会議を開き、原則として過半数による議決により当該団体の意思を決定する会議体をいう。
【法94条】
町村は、条例で、第89条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。
【法95条】
前条の規定による町村総会に関しては、町村の議会に関する規定を準用する。
町村総会を設けるに当たっては、条例により町村総会を設ける旨の規定を必要とする。
現在まで町村総会が設けられた例は2例あり、地方自治法施行前の町村制の下で神奈川県足柄下郡芦ノ湯村に設けられた例と、地方自治法施行後に東京都八丈支庁管内宇津木村で設けられた例があるのみである。
町村総会は法95条に規定のとおり町村の議会に関する規定を準用するため、条例の制定改廃や予算の議決、決算の認定等の議決権限や定例会・臨時会の規定や招集、会期、過半数議決、会議録の作成等を行う必要がある。
ただし、地方公共団体の議会の解散に関する特例法に基づく議会の自主解散や議員定数、議員報酬等の規定は選挙で選ばれた議員によって構成される議会にのみ適用されるものであることから、町村総会には適用されないことに留意が必要である。
今後、少子高齢化とともに人口が減少し、地方において過疎化が進むと、町村総会の手法を取り入れざるを得ない地方公共団体が増える可能性はある。
その場合に、政治や行政に対して無関心である傾向が強い中で、選挙権を有する住民自身が町村総会に出席し、討議して意思決定をすることとなるが、ある程度の人数を超える町村総会の構成状況で、果たして長期的展望に立ちながら当該地方公共団体全体を見据えてどのようなまちとすべきかを住民が議論することは容易ではないのではないか。どうしても自らの直接利害関係のある身近な地域の課題の解決を個々の住民がそれぞれ求めるような状況が続出すると、議事機関、意思決定機関として町村総会における意思がまとまらず、地方公共団体の行政が円滑に機能するか未知数であるといえる。
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