2017.06.12 政策研究
第9回 地方自治法に定める予算とは
1 地方自治法に定める予算とは
予算というと、一般的に歳入と歳出だけのことを示すように思われがちだが、地方自治法215条には、以下の7項目が定められている。
① 歳入歳出予算
② 継続費
③ 繰越明許費
④ 債務負担行為
⑤ 地方債
⑥ 一時借入金
⑦ 歳出予算の各項の経費の金額の流用
2 歳入歳出予算
歳入歳出予算とは、一会計年度において予測されるすべての収入と支出の見積りのこと。歳入歳出予算のポイントは以下の3点にまとめられる。
第1に、歳入予算=歳出予算となること。これは、歳入予算と歳出予算はバランスがとれている必要があるためである。単独で、歳入予算だけ、歳出予算だけを決定するわけではないので、同額となる。
第2に、歳出は予算を超えて支出することができない。歳出予算が決まることにより、自治体は歳出することが可能となる。このため、歳出予算は自治体を拘束することとなり、歳出予算以上の支出をすることはできない。そもそも、歳出予算で定めた以上に支出を行っていては、予算で定める意味はなくなってしまう。
仮に、年度の途中で急きょ対応する必要が出てきた場合には、補正予算を編成したり、予備費で対応したりする。
第3に、歳入は予算額を超えることがある。歳入については、前もって予算に定められていなくても歳入する場合がある。例えば、国の補正予算が年度の途中に成立し、新たな交付金などが自治体に交付される場合がある。こうした場合、予算編成の際には予定していなかったものだが、当然、歳入となる。
また、歳入については予算以上に歳入することもある。例えば、寄附金などは見込むことは難しいが、篤志家が多額の寄附をすると、当然予算額以上の歳入となる。「予算にないので、寄附を受けることはできません」とはいえない。
3 継続費
継続費とは、2年度以上にわたって支出をする必要がある場合、あらかじめその経費の総額と年度ごとの額を事業ごとに定めておくもの。しかし、実際に継続費はあまり用いられず、複数年度にわたって支出が必要な場合は、債務負担行為が活用されている。
自治体の事業には、施設の整備のように複数年にわたって行うものがある。その経費の総額及び年ごとの額をあらかじめ一括して予算に定めて、複数年に支出するものを継続費という。本来、予算は会計年度を単位とするという会計年度独立の原則があるが、その例外となる。
例えば、○○文化センター整備事業として総額20億円の事業があったとする。この場合、平成29年度は5億円、30年度は5億円、31年度は10億円のように年度ごとに支出額を定める。なお、これは年度割の支出予定額であり、実際の支出額と一致するとは限らない。
仮に、29年度に5億円のうち4億円しか使わなかった場合には、翌年度に繰り越すことできる。これは30年度で同様のことが起こった場合でも、31年度に繰り越すことができる。このようなことを「継続費の逓次繰越」といい、順次繰り越せることを意味している。一般的に、歳出予算と実際の支出額の差を不用額というが、こうした場合は不用額にならずに繰り越すことになる。
継続費を活用する際には「継続費に関する調書」を作成する。また、継続費の期間については毎年度「継続費繰越計算書」を作成する必要がある。事業が終了した場合には「継続費精算報告書」を作成し、決算に合わせ議会に報告することになる。
このように事務的な負担が多いため、実際には継続費の制度は使われず、債務負担行為が活用されている。
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