2017.06.12 政策研究
第9回 地方自治法に定める予算とは
7 一時借入金
これは「いちじかりいれきん」と読み、略して「いちかり」と呼ばれている。文字どおり、年度内の一時的な資金繰りを目的とした借入金である。
例えば、予算では歳入と歳出の額が決められているが、年度当初から歳入が満額あるわけではない。税収は、納期が決まっており、その納期にならないと自治体の歳入とならない。国などからの補助金などについても、年度当初から振り込まれるとは限らない。
このため、場合によっては現金が不足することとなり、そのために一時お金を借りることがある。それがこの一時借入金であり、予算では、この一時借入金の限度額を定める。
8 歳出予算の各項の経費の金額の流用
流用とは、予算の補正等を行わないで、予算執行上の処理として一定の経費に充てるための財源を他の支出項目に充当すること。
予算の流用については、議決科目である「款」・「項」については原則禁止されている。ただし、各項の経費は予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより、これを流用することができるとされている(地方自治法220条2項)。
具体的には、予算案における予算総則の中で、「歳出予算の各項の経費の金額を流用することができる場合は、各項に計上した給料、職員手当等及び共済費に係る予算額に過不足を生じた場合における同一款内でのこれらの経費の各項の間とする」などと規定している。
予算の執行科目である「目」・「節」については議決対象でないため、状況の変化に応じて対応することができる。しかしながら、何でも勝手に流用してしまっては、予算が混乱してしまう。
このため、「目」・「節」についても原則は流用禁止としながらも、歳出予算の執行上やむを得ない場合に限り、各目、各節間において相互に流用することができることを予算事務規則などで規定している。
なお、実務では、いったん流用して対応した後、補正予算で本来必要な予算を計上し、その後、流用先(財源が不足したため流用により予算を充当したもの)から、流用元(財源の借入先)に金額を返還したりする。これを「流用繰戻」とか「流用戻し」といったりする。
なるほど。一口に予算といっても、こんなに種類があるんですね。

そうなんだ。今更かもしれないけれど、議案の予算案、予算説明書には何が書かれているかを確認すると、改めて予算とは何かが分かるよ。

確かに、一般に予算というと、歳入歳出予算だけを考えてしまいますもんね。

でも、繰越明許費、債務負担行為も実際には、よく使われているからね。

「この債務負担行為について質問します」なんて委員会でいえば、ベテラン議員ぽく見えるかも!

……おいおい。

今回のおさらい
1 予算とは、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費、債務負担行為、地方債、一時借入金、歳出予算の各項の経費の金額の流用を指す。
2 実際には継続費の制度は使われず、債務負担行為が活用されている。
3 流用とは、予算の補正等を行わないで、予算執行上の処理として一定の経費に充てるための財源を他の支出項目に充当すること。