2017.06.12 議会改革
第53回 町村総会/立候補制における投票の効力
立候補制における投票の効力
A議会では議長選挙を行うに当たり公職選挙法(以下「公選法」という)86条の4における立候補制を用いて、選挙を行っている。その際には議長選挙の前に本会議をいったん休憩し、全員協議会を開いて立候補の表明を行っている。このたび、議長選挙を行い、立候補者が1人だったにもかかわらず、立候補していない議員が最多得票を得て議長に当選したが、この場合、立候補していない者に対する投票を無効票と考え、当該選挙を再選挙することは可能か。
法97条により普通地方公共団体の議会は、法律又はこれに基づく政令によりその権限に属する選挙を行わなければならないとされ、議会の内部組織に係る議長選挙も議会における法律に基づく選挙である。
議会における選挙はその手続として法118条に規定された一定の公選法の規定を準用し選挙を行わなければならない。
すなわち公選法46条1項及び4項、47条、48条、68条1項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する95条の規定を用いて選挙を行う。
【法118条】
法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第46条第1項及び第4項 、第47条、第48条、第68条第1項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第95条の規定を準用する。その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。
ところで、議長選挙において立候補制を規定している公選法86条の4を取り入れることは、法118条に反するため法的にはできないと解する。しかし、事実上用いることは可能である。
ここで議長選挙において一般的に立候補制を用いた場合、公選法68条1項2号の立候補していない者への投票は無効票として扱われることとなる。
【公選法68条】
① 衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
1 所定の用紙を用いないもの
2 公職の候補者でない者又は第86条の8第1項、第87条第1項若しくは第2項、第87条の2、第88条、第251条の2若しくは第251条の3の規定により公職の候補者となることができない者の氏名を記載したもの
3 第86条第1項若しくは第8項の規定による届出をした政党その他の政治団体で同条第1項各号のいずれにも該当していなかつたものの当該届出に係る候補者、同条第9項後段の規定による届出に係る候補者又は第87条第3項の規定に違反してされた届出に係る候補者の氏名を記載したもの
4 一投票中に二人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの
5 被選挙権のない公職の候補者の氏名を記載したもの
6 公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
7 公職の候補者の氏名を自書しないもの
8 公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの
しかし、立候補制が法的な議会における選挙において用いられることなく、事実上の形で用いられた場合、立候補をしていない者に対する投票を無効票と扱うことはできず、有効票となる。
そのため議会における選挙において立候補していないにもかかわらず、当選することは理論上可能となる。