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2017.06.12 議会改革

第32回 議決事件の追加はどのようなスタンスで行うべきか

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実務の輝き

 追加される議決事件はそれぞれの自治体によって様々なわけですが、「なぜ、この議決事件を追加したのだろう……」と思われる事項について、解説をしておこうと思います。
(市町村国土利用計画の策定等)
 2011(平成23)年の地方自治法改正で市町村の基本構想策定の義務付けが廃止されました。しかし、都市計画法15条3項のような規定があります(3)。現在でも、「建設に関する基本構想」については、議会の議決を求めていると読めるのです。

○都市計画法
 (都市計画を定める者)
第15条 1・2 略
3 市町村が定める都市計画は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想に即し、かつ、都道府県が定めた都市計画に適合したものでなければならない。
4 略

 条文中の「建設に関する基本構想」という言葉も気になりますが、これは、市町村の基本構想ばかりでなく、国土利用計画法8条に基づく市町村計画も指しています。こうしたことから、市町村国土利用計画の策定等についても議決事件に追加すべきと判断する議会があるようです。
(実費弁償)
 地方自治法207条には同法を根拠にして出頭した証人や参考人などについて条例を定めて実費弁償しなければならないとしています。そのため、それぞれの自治体では実費弁償条例を定めていますが、この条例には、地方自治法以外の法令を根拠にして出頭する証人などの実費弁償が抜け落ちている場合があります。こうした抜け落ちた部分をそれぞれの自治体が拾い上げて、別途、議決事件として追加しています。
(定数)
 公務員の定数を議決事件に加える例も見られます。自治体の職員については、「定数条例で定められているはずなのに……」と思ったかもしれません。ただ、「臨時又は非常勤の職」についてはこの定数から除かれています(地方自治法172条3項、消防組織法11条2項)。もし、それについても議会がコントロールしたいと考える場合には、議決事件として追加することになります。

提言

 96条2項の追加の議決事件は、議会基本条例で規定することもありますが、議会基本条例とは別に「議決すべき事件を定める条例」で規定する場合もあります。また、個別の条例などにバラバラに規定する場合もあります。そのうち、「議決すべき事件を定める条例」で規定する場合に見受けられるのが、法改正に伴う「お手入れ」不足です。引用条文がズレていたり、表現が古い場合もしばしばです。この際、必要性も含めて、こうした「お手入れ」をしておきたいものです。ついでといえば、96条1項を根拠に定めた条例の内容もこの際、見直しておくのはどうでしょう。手間はかかりますが、「追加上手」になるためには、何より面倒がらないことが大切です。


(1) 元の情報を見つけることができず、加藤幸雄「条例による議決事件の追加について」(地方財務1998年1月号)からデータを引用しています。地方自治月報58号でのデータを積算すると、2016(平成28)年4月現在では、その数も610市に増えていることが分かります。
(2) 以前は市町村については、総合計画のうち、いわゆる基本構想の策定を義務付けられていましたが、2011(平成23)年の地方自治法改正でその義務は削除されました。しかし、現在でもほとんどの市町村で総合計画は策定されています。
(3) 廣瀬克哉「あらためて基本構想のあり方と議決の意義を考える」廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム編著『議会改革白書2015年版』生活社(2015年)45頁が詳しいです。ほかに、都市再生特別措置法、景観法、都市緑地法、農村地域工業等導入促進法、農業振興地域の整備に関する法律にこうした規定があると指摘しています。

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