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2017.06.12 議会改革

第32回 議決事件の追加はどのようなスタンスで行うべきか

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議会事務局実務研究会 吉田利宏

お悩み(「追加上手になりたい」さん 50代 市議会議員)
 市の議会改革特別委員会の委員長をしています。地方自治法96条2項で追加する議決事件が議論になっています。現在、我が市で追加した事項は「名誉市民の決定・取消し」と「市の木・花に関すること」だけなのですが、さらに、どのような事項を追加すべきか、各会派でまとまりません。どのようなスタンスでどのような議決事件を追加すべきなのかご教示をいただけたらと思います。

回答案
A 議会の権限を強化するためにはできるだけ多くの議決事件を追加することが望ましい。
B 追加の議決事件は、ある程度、重点化する必要がある。特に、総合計画など行政の根幹となる計画を追加するのが望ましい。
C 追加の議決事件は、友好都市の締結、名誉市民の決定など政治的な立場を超えて自治体として意思を示すべき事項に限定するのが望ましい。

お悩みへのアプローチ

 地方自治法96条1項の議決事件(議決事項)は、よくよく読んでみると不思議です。一定の契約の締結や一定の財産の取得や処分など、本来なら「行政の役割」に属することについても、議会が議決をしないといけないとしているのです。財政的な影響が大きいということを考えてのことです。さらに、同条2項には、次のような規定があります。地域の特性に応じて、議決事件を増やすことができるようになっています。

○地方自治法
第96条 略
② 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものにあつては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。

 こうした規定を見ると「やはり、議会にこそ大きな権限が与えられているんだ!」と関係者は理解するかもしれません。しかし、そうではありません。例えば、首長は議会の議決に異議があるときには「再議」に付すことができます。いわば拒否権を与えているといえるのです。
 権限だけを考えると、議会は議決事件をどんどんと増やして行政に関与することができますし、一方、首長は再議を連発して議会の戦意を喪失させることができます。しかし、そんな素人同士のボクシングのような「ノーガードの打ち合い」からは何も生まれません。住民の福祉の実現のために、効果的にこうした権限を使用しなければなりません。
 96条2項は、分権改革前から存在していました。ただ、自治体側で手出しができない機関委任事務が存在していたこともあり、あまり利用されていませんでした。地方分権一括法は2000(平成12)年4月から施行されたのですが、1997(平成9)年4月の全国市議会議長会の調査では、96条2項で議決事件を追加した市は68市しかなかったとのことです(1)
 ところが分権改革で、この96条2項が脚光を浴びます。さらに、2011(平成23)年の地方自治法改正では、一部の例外を除いて、法定受託事務も含めて議決事件として追加できるようになりました。こうしたことから、議会や議員の間で「96条2項をうまく利用した方がいい」ということは常識になりつつあります。ただ、「どんなことを追加したらいいのか分からない」と感じている議会や議員も多いようです。「追加上手になりたい」さんの議会もまさにそうした議会のひとつなのでしょう。

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