2017.05.12 政策研究
第8回 地方債の役割と種類
1 地方債の概要
(1)地方債とは
「地方債」は、2か年度以上にわたって借り入れるものをいう。年度内の一時的な借入れである「一時借入金」とは異なる。
自治体の借金だが、家計の住宅ローンのようなものをイメージすると分かりやすい。新たな公共施設の建設、学校の改修や改築、公園や橋梁(きょうりょう)の整備など、財政上、大きな負担となる場合に地方債を活用する。
地方債は、発行団体により市債、県債などと呼ばれ、予算科目の「款」の1つとして位置付けられる。また、地方債を発行して資金調達することを「地方債を起こす」ということから、「起債」という。
(2)地方債の役割
地方債の役割としては、大きく次の2つがある。
① 世代間の負担の公平
先の例に示したように、地方債を発行する際は、大きな財政負担となる場合がほとんどである。こうした公共施設の建設等の場合、一般的に、現在の世代(住民)だけでなく、将来の世代も使用することとなる。
つまり、多額の借金を長期にわたって返済することは、現在の世代だけでなく、将来の世代にも負担してもらい、支払ってもらうということを意味する。
② 財政収支の年度間調整
地方債を活用するような事業は大きな財政負担となるので、仮に地方債を活用しなければ、単年度、若しくは工事費を支払う2、3年で多額の予算が必要となる。そうすると、そうした年度だけ予算規模は大きく膨らみ、事業が終了すれば、予算規模はまたもとに戻るという、アップダウンの激しい財政運営になってしまう。
これでは、安定した財政運営とはいえない。このため、地方債を活用して、年度間に大きな変化がないように調整する。
(3)適債事業
地方債は、自治体の借金となるが、どんな名目でもよいというわけではない。地方債を発行できる事業は、地方財政法5条に限定列挙されている。
具体的には、①公営企業に要する経費、②出資金及び貸付金、③地方債の借換えに要する経費、④災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費、⑤公共施設、公用施設の建設事業費、である。
このほか、他の法律の特例措置として地方債を発行できる場合がある。なお、このように地方債の対象となる事業を適債事業といい、前者の地方財政法5条に基づく地方債を5条債、後者の特例措置により発行するものを特例債といったりする。
(4)協議制・届出制・許可制
地方公共団体が地方債を発行するときは、原則として、都道府県及び指定都市にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事と協議を行うことが必要である。
しかし、平成24年度より、地域の自主性及び自立性を高める観点から、地方債協議制度を一部見直し、財政状況について一定の基準を満たす地方公共団体については、原則として、民間等資金債の起債に係る協議を不要とし、事前に届け出ることで起債ができる事前届出制が導入された。
なお、実質赤字額や実質公債費比率等が一定水準以上の自治体が起債する場合は、総務大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならない。この場合、協議や届出は必要ない。