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2017.05.12 政策研究

第6回 監査では、実地検査(実査)でどんなことをしているのか?

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学校開放時の利用団体の私物管理が大きな課題

 学校監査において、薬品や教材などの実査とともに重点的にチェックしているのが、施設等の安全管理状況である。ここ数年集中して問題点を指摘してきたのが、学校開放時に学校施設を利用する外部団体の私物管理である。学校施設の有効活用として、学校施設を地域の外部団体に開放することは望ましい。しかし、各団体の私物が体育用具室やグラウンドの体育用具倉庫などに許可なく放置されていても、最近は、地域に開かれた学校を標榜(ひょうぼう)しているため、なかなか学校側からは、指摘しづらいようだ。
 しかし、こういった私物は、校長の管理下にないため、防災上あるいは教育上の観点からも管理が行き届かない。ある学校では、グラウンドの体育用具倉庫が丸ごと外部利用団体の備品で占領されており、その鍵も管理職が保有していなかった。そのため、学校監査の際に、当該倉庫内部の実査ができないという事態に陥った。学校敷地内に、即座に移動可能な市販の物置を設置することは、学校長の許可があれば認めている。しかし、ある学校では、外部利用団体が、地面に固定され容易に移動ができないつくりつけ物置を学校内に設置していた。監査委員会としては、この物置のすみやかな撤去を指摘した。
 また、最近では、生徒数の減少に伴う空き教室、学校関係者からすれば「転用可能教室」の管理が課題となっている。ある学校の「転用可能教室」には、市の防災関係の備品が保管されていた。各学校には、防災時の地域住民の用に供するために、あるいは学校が避難所となった際に利用するための用具類を格納する防災倉庫が設置されている。そういった防災倉庫は、校舎外に設置されている。ところが、当該防災関係備品は、そういった目的ではなく、市全体の防災用の備品類であった。別の施設調査で、市の防災倉庫が、格納に十分なスペースを有していることを実査で確認済みであったため、転用可能教室を倉庫として利用することは教育財産である学校の利用目的にそぐわないと、その対処を具申した。このようなこともやはり実査を通じて発見できた。監査委員にとって実査は大変重要であるといえる。

実地検査権が議会の権限となると、議会そのものが監査を行うことになるのでは?

 さて、ここまでの説明で、おおむね実地検査の実態をつかんでいただけたと思う。私としても、議会に実地検査権が付与されることは望ましいことと思っている。ただ、当然ながら実地検査権を行使するためには、いくつかの課題を解決しなくてはならない。まず、これまでの議会事務局の体制では実地検査権の行使に実質的には対応できない。実地検査のノウハウが議会事務局には蓄積されていないからだ。もちろん、実地検査を経験している監査事務局経験者が異動すれば、この点については対応可能である。しかし、職員の定員管理が厳しい中では現実的には難しいだろう。議会事務局として、これまでの事務に加え実地検査の人員を増強しなくてはならないのである。また、議会に実地検査権を与えるからといって、監査委員会の実地検査権を廃することはできないだろう。となると、監査を受ける現場は、監査委員会と議会の両方から2回の実地検査を受ける可能性が生じる。
 これらの課題に加えて、もっと根本的な問題として、地方自治法216条の予算や決算に対する議決の制約の問題がある。同条では、「歳入歳出予算は、歳入にあつては、その性質に従つて款に大別し、かつ、各款中においてはこれを項に区分し、歳出にあつては、その目的に従つてこれを款項に区分しなければならない」とされている。この条文では、議会が議決する予算、決算は款項に対象を限定している。つまり、款項以下の目節間の流用は議決を必要としないとされているのだ。一方、監査委員会は、目節間の流用も監査対象としている。前述した実地検査の実態を見ていただければ分かるように、病院における薬品の購入や、学校の備品である薬品購入は、我が市の予算上は、款項ではなく、節で計上されている項目である。現状の予算決算サイクルからすれば、実地検査権は、決算審査に伴って行われる性格のものになるだろう。しかし、決算として議決対象でない項目を、果たして議会の実地検査権の対象としてよいのだろうか。この点について法の該当条文の改正もないままに、実地検査権を仮に与えられたとしても、様々な制約から十分に実地検査権が機能しない可能性がある。このことから、いくら実地検査権が付与されたとしても、議会にとって虎の子ともいえる議選監査制度を手放すというのはどうしても納得できないということがご理解いただけたであろうか。今後の地方制度調査会の議論を注意深く見守っていきたい。


(1) 「『議会の実地検査権等の監視機能』について ④ 議会の実地検査権等の監視機能 監査委員について、仮に議員選出の監査委員を廃止するのであれば、議会が独自に執行機関を監視する機能を強化するため、議会に実地検査権を付与すべきではないかとの意見があった」(第29次地方制度調査会第27回専門小委員会資料(平成21年5月15日))。

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