2017.04.25 議員活動
少人数議会と政策サポーター
東京大学名誉教授 大森彌
議員定数6人や8人の議会
かつての地方自治法は、自治体議会議員の定数について人口規模段階別にその上限を定めていた。各市町村は、別表に示された上限を超えない議員数を条例で決めていた。この規定が削除され、議員数を何人とするかは、各自治体が自由に決められるようになった。実際は、多くの市町村で、それまでの定数を勘案しつつ議員定数を削減することとなった。概して、定数削減の流れの中で、それぞれの市町村議会は、合議体である議会に託された任務を適切に果たすには、何人の議員が必要なのか、改めて問われることとなった。そうした中で、合議体としての議会の定数を判断するひとつの考え方として、常任委員会制度が採用されていることを重視し、委員会での有効な議論が成り立つ人数を1委員会当たり7~8人とし、それに委員会数を掛けて得られる数を議員定数とする方式が打ち出された。
しかし、この常任委員会の委員数を重視する考え方は、例えば人口5,000人未満のような小規模自治体の議会には適用しにくい。町村議会の上限数は、2,000人未満が12人、2,000人以上5,000人未満が14人、5,000人以上1万人未満が18人、1万人以上2万人未満が22人、2万人以上が26人であった。人口2,000人未満の自治体で、12人の議員定数を維持するとしても、仮に常任委員会を2つ設置するとすれば、議員数は議長を含めて15人を必要とすることになるから定数を増やさなければならない。議員定数を増やせなければ、常任委員会は置かないか、1つ置くことになる。
実際には、小規模自治体では、12人を削減し、議員定数を8人や6人にしている自治体も出てきている。例えば、愛知県豊根村(人口約1,100人)議会の定数は8人、全員で「ゆたかなむらづくり委員会」も議会運営委員会も構成している。沖縄県与那国町(人口約1,700人)議会の定数は6人で、常任委員会は置いていない。
最少定数の議会を考えてみる。合議体の定数は3人以上であるが、3人議会にすると、1人議長になるから、残り2人による審議になり、仮に1対1の対立が続くと議長決定が常態化してしまう。そこで議会審議の議員数が奇数になるように4人議会か6人議会にする。この人数で議事機関として自治体の意思を確定することになる。さすがに4人議会はまだないが、6人議会、8人議会が現に存在して活動しており、複数の直接公選議員によって構成される議会を必置とする日本国憲法の要請に応えている。こんなに少ない議員数では議会に託された任務は十分に遂行できないのではないかという疑問が出てくるかもしれない。少人数議会では、こうした疑問に応えるための工夫が必要となっているともいえる。この問題を考える上で参考になると思われるのが、長野県飯綱町議会の試みである。
長野県飯綱町議会の試み
長野県飯綱町は、2005(平成17)年10月1日、 牟礼村と三水村が合併して発足した、長野県北部に位置する人口約1万1,000人の町である。飯綱町議会は、第三セクター(スキー場)の破綻をきっかけに、議会の責任も問われていることを重視し、議会改革に乗り出した。合併前には両村それぞれ18人ずつで36人いた議員を、合併後は18人にしている。その18人を、2009(平成 21)年10月の一般選挙から15人にしている。条例定数は15人であるが、2016(平成28)年3月現在、欠員が2人あり、現員13人である。現在、6人(8人)の総務産業常任委員会、6人(7人)の福祉文教常任委員会、12人(14人)の予算決算常任委員会、6人(6人)の議会運営委員会を置いている(カッコ内は条例定数)。
飯綱町議会は、議員定数が減る中で、人口減少、少子高齢化の急速な進行によって、地域社会に様々な政策課題が生まれており、町議会としての政策立案力が問われるという認識に立って、寺島渉議長のリーダーシップの下に、住民から議会を支援してもらう仕組みを考え出した。それが「政策サポーター」制度である。町民の知恵も借りて政策づくりを協働で進めることをねらいとしている。
政策サポーター制度がどのように設立・運用されてきたかを「平成27年度版飯綱町議会白書」によって概観してみよう。
(1)第1次政策サポーター
2010(平成22)年1月、議員間による自由討議等で明らかとなった政策課題等を集約し、合併以降初めて「予算・政策要望書」を町長へ提出した。
同年5月、政策サポーター制度を創設。第1次政策サポーター12人(公募2人・要請10人、男性10人・女性2人)を委嘱。政策サポーター12人と議員15人の協働による政策サポーター会議を開催。議会で決めた2つの研究テーマ「行財政改革研究会」と「都市との交流・人口増加研究会」の2チームに分かれ、それぞれ6回の会議を開催。それぞれの研究会で学習と自由討議を重ね、政策提言内容をとりまとめ(「飯綱町における行財政改革推進のための政策提言」と「都市との交流事業を多様に発展させ、町人口の増加をめざす政策提言」)、11月、町長へ提出。町長からは翌2011(平成23)年2月に回答書を得る。