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2017.04.10 政策研究

【フォーカス!】人口推計

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

人口減少対策に戦略を 東京一極集中の是正が鍵

 国立社会保障・人口問題研究所は4月10日、日本の将来推計人口を公表した。2015年に1億2709万人だった人口は、50年後の2065年には8808万人まで減ると試算している。
 足元の出生率の改善によって、5年前の推計に比べ減少ペースは鈍化している。とはいえ、2015年から50年間で3割減となる。平均すると毎年約78万人、小規模な政令指定都市が一つなくなる急激な減り方であることは変わりがない。

仮定の話
 安倍晋三政権は「1億総活躍プラン」などで、2025年度末までに「希望出生率1.8の実現」、子育て支援や社会保障の充実で「2060年に1億人程度を維持」といった政府目標を掲げ、人口減少に取り組む姿勢をアピールしてきた。
 今回の人口推計について菅義偉官房長官は10日の記者会見で、総活躍プランに掲げた施策を推進すれば「合計特殊出生率や総人口の推計値はさらに上昇する」と述べ、政府目標の達成にも自信を示した。
 確かに、女性1人が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2010年の1.39から、2015年には1.45と上昇している。保育の受け皿整備や出産後も女性が仕事を続けやすくする家庭と仕事の両立支援によって、30歳から40歳代の出産が増えたのが要因だという。
 今回の試算は、これに平均寿命の延びも加わり、人口減少スピードは緩和されている。ただ総人口が1億人を切る時期は、前回の推計よりも5年後ろにずれて2053年となっただけだ。2060年の1億人維持目標の達成が見えてきたわけではない。今のペースだと、100年後の2115年の人口は半減以下の5056万人になる。少子化対策の一層の充実が求められるという状況に変わりはない。
 今回の推計では、通常の「高位」「中位」「低位」の3通りの推計に加えて、安倍政権が実現を目指す「希望出生率1.8」がかなえば、2060年の1億人維持は可能との試算結果も示した。政権側の意向に沿った内容となる。ただ、これはあくまで2025年度までに1.8を達成し、そのペースが続いたという仮定の話でしかなく、参考程度にしかならない。

国民的な議論
 安倍政権は民主党から政権を奪還した後、アベノミクス、地方創生の総合戦略、1億総活躍プラン、働き方改革実行計画と、毎年のように新政策を打ち出している。課題の解決に前向きであると宣伝し、「全都道府県で初めて有効求人倍率が1を超えた」などと、その成果を売り込むことには余念がない。
 だが、その陰で、保育所などに入れず待機している児童を2017年度にはゼロにするとした目標の達成は事実上断念した。「幼稚園落ちた、日本死ね」といった母親の嘆きは、まだまだ積み重なっているのだ。
 地方創生総合戦略の柱で、人口減少対策も兼ねる東京一極集中の是正は、文化庁の移転が決まった程度で、企業の本社機能の地方移転も進んでいない。少子化対策に本気で取り組んでいるのかは疑問符が付く状況に変わりはない。
 安倍政権は、安全保障法制の制定や憲法改正などを急ぐが、最優先して取り組むべきは、この国の存立の基盤である人口の維持ではないか。これは、政権のアピールに使う類のものではなく、国民の未来に直結する超党派の政治課題であり、政府は総合的な戦略をもって取り組むべきである。
 そのためには日本経済や社会保障、地域社会への人口減少の影響を分析して国民に提示、どのような国を目指すのかについて、国民的な議論が不可欠だ。

戦略的な対応を
 経済面では、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が減ることは明らかだ。戦略では生産年齢人口も減少する中、世界第3位の経済規模をどう維持するのか道筋を示すべきだ。企業は既に、労働力不足を補うために外国人の活用に動きだした。今後、技能実習生や外国人労働者という形で労働力を確保するのか、移民の受け入れまで考えるのか、幅広い議論が必要となる。
 社会保障では、今回の推計によって1965年には高齢者1人を現役世代9.1人で支えていた「胴上げ型」の社会構造から、2065年には1.2人で支える「肩車型」と厳しい状況になる。ただこれは昔から言われてきた傾向と同じだ。つまりは総活躍プランの実現とは切り離して考えた方がよさそうである。年金や医療の制度を維持するための抜本的な対策が必要なのである。
 少子化対策も急務である。自民党の若手からは、企業や働く人が保険料を負担し幼児教育や保育の無償化財源に充てる「こども保険」創設案も出ている。安定的な予算を確保するためには、消費税増税にも真正面から取り組むべきだ。これ以上、逃げてはいけない。
 少子化対策が進んだ北欧などに比べ少ない、家族や子ども向けの公的支出を増やすことで、子育て負担を軽減する方策を戦略に盛り込むべきだろう。
 地方自治体によって深刻なのは、急増する空き家の対策や過剰となる公共施設の再編、さらに地域の足となる公共交通機関の維持などに待ったなしの対応を迫られることだ。
 都市部に比べて、地方部の方が現在でも出生率は高い傾向がある。通勤時間が短く、子育てする時間的な余裕があることは、3世代同居といった家族の助けがあることも助けになっている。この点からは、東京など大都市の仕事を地方に移すことが少子化対策になることは明らかだ。働き方改革とも合わせ、東京一極集中を是正することは方向としては正しい。
 仕事を地方に移すことは、地域の活性化、首都直下地震など大震災への備えにもなる。この国の国力を守ることにもなる。中央省庁やその付属機関、国立の大学などを中心に、政府はできることから始めるべきではないか。本気で地方移転を進める戦略が待たれている。
 

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