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2017.04.10 政策研究

第5回 定期監査の対象は、財務だけに限定されているわけではない

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 説明聴取に当たっては、同時に実施した物品等調査や施設調査の実地検査の結果も含めて質問を行う。施設調査についても詳細な資料が用意されており、施設ごとの概要や公有財産調書、登記簿、契約書、位置図などが用意される。説明聴取においても、決算審査と同様に、監査事務局にチェック事項を用意していただく。
 同僚の議選監査委員が保有していたこれらの「定期監査」の資料を初めて見たときは、その内容の充実ぶりに軽いショックを受けてしまった。そして、行政についての理解をより一段高め、議員としての力量を高め、深めるためにも、必ず議選監査委員に就任することを心に決めたほどだ。

定期監査の説明聴取では、行政監査は当たり前

 「定期監査」では、ある事業について監査するため、以下のようなやりとりが行われる。例えば、①その事業の概要について、②その事業の目的や効果について、③事業の利用実績について、といった項目を質問していく。この内容は、まさに「行政監査」であり、一般質問の項目立てに極めて似ている。
 では、一般質問と「定期監査」における質問の違いは何か。一般質問では、新たな事業の提案に言及することがしばしばある。行政監査では、原則それはない。しかし、提案とまではいかなくても、質疑のやりとりを通じて、他市事例を参照した代替案について話が及ぶこともある。
 ここまでであれば、「行政監査」の範囲内であると私は考える。このあたりのバランスは、微妙ではある。以上のような事情もあり、我が市の場合、一般質問項目が「定期監査」の項目と重なる場合は、やんわりと訂正や変更を促される。私としても、守秘義務に抵触したくはないので、この指摘には素直に従うことが多い。
 財務的な内容が中心となる「財務監査」的な質問の例は、以下のとおり。例えばある契約について、随意契約となった理由や契約方法について質問する、あるいは、歳入についても不納欠損の状況やその対策はどうするのか、といった質問である。いずれにせよ、財務の事務と、それ以外の事務とを明確に分けて質問していては、やりとりがぎこちなくなるので、実際の「定期監査」では、この2つが渾然(こんぜん)一体となって質問が進む。
 「定期監査」の結果は、最終的に報告書としてまとめられ、議会や市長、関係者に提出され公表される。報告書も、以前は具体的な内容に触れることは少なかったが、最近ではより具体的に指摘するようになってきた。その結果、報告書の具体的な記述内容を基に一般質問を行う議員も出てきている。
 そういった形で発展することは、望むところである。どうしても、監査委員の議論では、他市の事例による代替案やより積極的な解決策までは言及することができない。しかし、議会の一般質問は発展的である。皆さんの議会においても、「定期監査」報告書は大いに活用していただきたいし、もし報告書の内容が抽象的であるなら、もっと具体的になるよう議選監査委員などに働きかけていただきたい。
 また、「定期監査」の議事録は、守秘義務に触れる部分以外は原則公開であるから、機会があればぜひとも参照していただきたい。議員にとっては、一般質問のネタの宝庫である。事務局の用意してくださるチェック事項や議選監査以外の監査委員の質問も、一般質問の作成に大いに参考になる内容である。「ああ、こういう切り口で行政に対して質問すればいいのか」という気づきが得られる。議選監査委員を経験した議員は、それ以前に比べて、一般質問の内容のレベルが数段高まらなくてはいけないし、我が市の議会では、やはり議選監査委員を経験した後は、一般質問に答える行政側も一目置くような、より研ぎ澄まされた質問となる印象がある。ぜひとも、議員には「定期監査」の結果だけでなく、その結果に至った議論のプロセスにも着目していただきたい。
 冒頭で紹介した改正地方自治法では、監査の充実強化とともに、内部統制の方針策定も大きな論点となっている。この2つは、一見別の論点のように見えるが、本来密接に関連している。監査委員が、もっと真摯に「行政監査」に取り組めば、「行政監査」は、「法令等の定めるところに従って適正に行われているか(合規性)」を監査することも目的としているのであるから、内部統制の充実につながるはずである。そういった点からも、「定期監査」=財務監査+行政監査が当たり前になっていかなくてはならない。


参考文献
 地方自治総合研究所監修、今村都南雄=辻山幸宣編著『逐条研究 地方自治法Ⅲ 執行機関―給与その他の給付』敬文堂、2014年、1016〜1028頁

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