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2017.04.10 政策研究

第5回 定期監査の対象は、財務だけに限定されているわけではない

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人口30万人を超える自治体議会議員 木田弥

 前回ご報告した議選監査委員の選択制を含む地方自治法改正案が、いよいよ国会に提出された。地方自治法改正案では、「議選監査委員の選任の義務付けの緩和」、つまり議選監査選択制が盛り込まれている。「義務付けの緩和」は、総務省の法案要綱を見る限り、今改正では主要な論点という扱いではなさそうだ。監査制度改正の要点は、むしろ「監査基準」を設定することにあるようだ。
 法案では、平成32年度までに、各地方公共団体は「監査基準」の制定が義務付けられる。我が市は、全国都市監査委員会(以下「全都監」という)の会員都市であることもあり、全都監の都市監査基準準則にのっとり、平成23年4月より、すでに全32条からなる監査基準を作成して運用している。「監査基準」は単独ではなく、「監査事務提要」に含まれている。
 監査基準のみならず、我が市では毎年3月に、次年度の監査計画を策定している。監査計画は、「基本方針」、「監査方針」、「年間監査計画」、「年間監査計画表」を含んでいる。「年間監査計画」及び「年間監査計画表」には、定期・行政監査、学校監査の具体的な監査対象と日程案が書き込まれている。行政監査や財政援助団体監査、工事監査については、計画策定の段階では未定となっており、6月の決算審査を終えてから改めて決定することとなっている。
 先日、この「年間監査計画」に重要な変更を加えることとなった。

実態に合わせて監査計画を改定

 変更のポイントは2つ。まず、「定期監査」を「定期及び行政監査」とした。これに伴い、「定期監査」の目的「財務に関する事務の執行」に「その他の事務事業の執行」を追加した。
 「何だ、たったそれだけ」と思う方もいるだろう。しかし、この変更の意味は大きい。変更の背景には、いまだに職員の中に、「定期監査」は「財務に関する事務」に限定されていると思い込んでいる方がいるからだ。「定期監査」は、カネの出入りに関する事務だけではなく、「その他の事務事業の執行」、つまり行政の活動そのものも監査対象としている。そのことを職員に対して改めて周知徹底するための変更である。
 「定期監査」は、現在の地方自治法(以下「法」という)では、199条4項に規定されており、「毎会計年度少くとも1回以上期日を定めて第1項の規定による監査をしなければならない」監査である(第1項の規定については後述)。
 一部の職員が、「定期監査」の対象は財務事務、つまりカネにまつわる事務に限定されると思い込んでしまっている原因は、いくつか考えられる。
 最も大きな原因は、平成3年の地方自治法改正まで、定期監査の対象が、「財務に関する事務」に限定されていたことだ。ここで、定期監査に関わる法199条の改正の歴史を、参考資料を参照しながら確認しておこう。
 昭和38年、地方自治体における財務会計制度の全面改正に伴い、法199条1項が改正された。同項及び2項の「出納その他の事務の執行」は、「財務に関する事務の執行」に範囲が限定された。この変更により、「その他の事務の執行」についての監査である「行政監査」は、「財務に関する事務の執行」には含まれないものと明確に線引きされることとなった。一方で、「行政監査」は、4項に新設された求めに応じて実施する「随時監査」でどうぞ、という構造になった。この構造が支配していた時代が、平成3年の法改正まで実に28年続いたことになる。現在の幹部職員が、行政の基礎を学んだ時期に一致する。
 ここで、平成3年の法改正を確認しよう。この改正では、199条に現在の2項が付け加えられた。「2 監査委員は、前項に定めるもののほか、必要があると認めるときは、普通地方公共団体の事務又は普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員の権限に属する事務(政令で定めるものを除く。)の執行について監査をすることができる」となった。この条項の追加によって、定期監査が「行政監査」まで明確に拡大されることとなった。
 もうひとつの要因としては、定期監査を定めた4項が、「第1項の規定による監査をしなければならない」という表現であることだろう。1項とは、財務監査のことであり、条文を狭く解釈すれば、定期監査=財務監査となる。しかし、4項では「ならない」と規定しているのは財務監査だけであり、広義に解釈すれば、4項は「最低限、財務監査は実施してください」ということであり、定期監査において、行政監査をしてはならないという規定ではない。また、後から追加された2項は、1項で定めるもののほか、必要があれば行政監査ができる規定になっており、この点からも、行政監査は可能であると判断できる。それでも納得いただけない方もいることから、我が市では、「定期監査」をわざわざ「定期及び行政監査」とし、その目的規定も改定したわけだ。

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