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2017.02.27 議会改革

第9回 地域経営のルールとしての自治・議会基本条例(下)

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4 もう一歩の先に:自治・議会基本条例を形骸化させない手法

 自治・議会基本条例が制定されれば、充実した議会運営が達成されるというものでもない。むしろ、制度化は空洞化=形骸化へ向かうのが歴史の現実である。その制度の空洞化を超える手法の開発が必要である。篠原一氏は次のように〈制度化→空洞化→新しい制度化〉という論理を提示している。「制度は空洞化し、参加制度に参加する(participate in participation)ことを自己目的とするようになりかねない。そしてこの制度の空洞化から再び運動化のきざしがあらわれることは、他の市民参加制度が本質的に運動化への契機を持っていることとまったく同様であり、この点でも制度化のみが万能薬ではないことは十分留意しておく必要があろう」と(篠原 1977:134)。これを神原勝氏は「運動化と制度化の無窮動」という言葉で受けている(神原 2009:121-123)。制度の「空洞化」は、再び運動化へと進むという住民への信頼は重要である。新たな運動化へ向かう住民を信頼しつつも、運動化を刺激する手法も重要である。それには「空洞化」の現状とその理由を見定め、制度をより充実させるための手法が必要である。議会基本条例を中心にして、議会改革を形骸化させない手法を考えておきたい。
 ① 議会改革推進会議等による検証。一般選挙後に、自治・議会基本条例を中心に議会運営の研修を行うとともに、議会改革推進会議等を議会基本条例に規定し、毎年改革の進捗状況をチェックすることも必要である。議会基本条例の条文を基準に検証することが不可欠である(徳島県議会、福島町議会、芽室町議会等)。このことによって、議会基本条例の改正の議論は活発化する。
 ② 議会報告会の義務化。議会報告会は、選挙の際の情報提供となるとともに(住民が多くの議員を比較できる機会となる)、議会改革を停滞させない意味がある(例えば、栗山町議会の制定理由)。議会報告会を義務付けることで、報告の素材を用意しなければならず、継続的な議会改革の動機付けともなる。そして、停滞した場合、議会報告会という場で住民からの批判に議会はさらされる。したがって、議会報告会(報告だけではなく広聴も含めるという意味で名称の見直しは必要)を「少なくとも年1回」開催する、などを条例に規定することは不可欠である。規定していなければ、「報告する内容ができてからやろう」、「選挙後にやろう」などと後退的思考がまん延し、空洞化の是正の機会をなくすことになるからである。
 ③ 成果を示すこと=住民の福祉向上につなげること。議会改革を停滞させないためには、議会基本条例を活用し、住民自治の向上につなげること、成果を示すことである。議会が地域経営の重要な機関であることを確認した住民は、議会を活用しようとする、より正確には議会とともに地域経営を行おうとする。この段階では、議会改革は後戻りできない(江藤 2016)。
 これらの手法は、議会基本条例、したがって議会改革の形骸化を防ぐ手法である。これらの応用は、自治基本条例、したがって地域経営の形骸化の防止にも役立つ。

~理解をさらに深めるために~
① 自治・議会基本条例制定における住民参加を充実させる。
② 自治基本条例を条例体系の上位に位置付けるために、地方政府基本法等の制定を考慮する。
③ 総合計画(及び都市憲章)と自治・議会基本条例の関係を探る。
④ 自治・議会基本条例は地域経営の重要なルールであるが、重要なことはそれらを活用し住民福祉の向上につなげることである(議会改革の本史の第2ステージ)。


〔参考文献〕
◇江藤俊昭(2016)『議会改革の第2ステージ』ぎょうせい
◇江藤俊昭(2016-17)「連載『自治体議会学』のススメ」第86~95回(自治・議会基本条例のバージョンアップ①~⑩)ガバナンス2016年5月号~2017年2月号
◇篠原一(1977)『市民参加』岩波書店
◇神原勝(2009)『増補 自治・議会基本条例論』公人の友社
◇木佐茂男編(1998)『自治立法の理論と手法』ぎょうせい

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