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2017.02.10 議会運営

第30回 起訴されたら議員報酬を支給停止する条例は制定可能か

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回答へのアプローチ

 こうしたことを踏まえて「本当はお役に立ちたいです」さんのお悩みを考えてみます。条例を定めさえすれば、刑事事件で起訴された議員の議員報酬を支給停止したり、有罪となれば停止分を不支給にすることは可能なのかということです。
 まずは、議員報酬の性格です。議員報酬は生活給ではありません。「『議員報酬』という名称にされても、『報酬』という『一定の役務の対価として与えられる反対給付』であることには変わりがない」(松本英昭『新版 逐条地方自治法〈第8次改定版〉』学陽書房(2015年)715頁)とされています。簡単にいえば、議員報酬は、「議員としての仕事に支払われるお金」ということになります。
 議員としての仕事はいろいろあるでしょうが、本会議や委員会などに出席するという議会での審議がその中心となることは間違いありません。ですから、「失職する可能性のある刑事事件について、逮捕され、勾留され、その他身体の拘束を受けたことにより会議などに出席できない」ときに、支給停止がされたり、有罪のときにはその議員報酬が不支給になるというのはよく理解ができます。いずれ失職する可能性のあるような罪を犯して、しかも、現時点で議員としての主な仕事ができていないわけです。こうした内容なら、おそらく誰も文句は言わないでしょう。
 では、次のような場合はどうでしょう。支給停止や支給停止されていた議員報酬を支給しないとする条例は認められるでしょうか?

・およそ刑事事件で起訴されたら議員報酬を支給停止などする条例
・保釈が許されて会議などに出席しても議員報酬を支給停止などする条例
・失職しない罪が確定した場合にも有罪であれば支給停止されていた議員報酬を不支給とする条例

 実際にはこうした条例を目にすることができます。「議員として働けないので支給をしません」、「失職する可能性があるので支給しません」というだけでは説明がつかない条例ということになります。
 ここで、少し議員から離れて、一般の地方公務員に目を向けてみましょう。
 地方公務員法28条2項2号では、刑事事件に関し起訴されたときには、任命権者は意に反して休職させることができると規定しています。休職中の給与については、それぞれの自治体の条例で定めることになるのですが、減額されるのが普通です。この休職処分は「分限処分」として行われるのですが、分限処分というのは、担っている官職を十分に果たすことができないとして免職、降任、休職、降給にするものです。起訴されたことをもって、住民の信頼を得て公務に携わることができないと任命権者が考えた場合には、休職処分にすることができるのです。
 自治体議員については、任命権者や分限処分という概念がありません。しかし、議員報酬の支給停止などの条例には同じ考え方が流れていると考えることができます。身体拘束をされていて物理的に会議などに出席できない場合はもちろんですが、失職する可能性があって議会で十分な働きができない議員と同じように、刑事事件に起訴されたことをもって「住民の信頼に応えることはできない」と議会が判断することは可能でしょう。ここまで考えると、刑事事件で起訴されたことを理由として、議員報酬を支給停止し、有罪となった場合には不支給とする条例は法的にできないとまではいえないということになります。回答案のうち、BとCは少し言い過ぎです。Aを回答にしたいと思います。

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