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2017.01.25 政策研究

【フォーカス!】豊洲移転

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

泥沼化する豊洲移転問題
小池知事、戦略ミスか

 今年夏の東京都議選に向けて候補者を絞り込むなど、新党の結成を視野に入れたような行動を続ける小池百合子都知事。都議会自民党を追い込むその政治的な手法は秀逸で、人気に衰えはない。だが、ここに来て築地市場の豊洲市場への移転が大きな不確定要素として急浮上した。扱いを誤れば風向きが変わる恐れもある。
 問題は豊洲市場で検出された想定外の地下水汚染だ。1月14日に開かれた都の「土壌汚染対策等に関する専門家会議」に提出されたモニタリング調査の最終結果によると、有害物質のベンゼンの値が最大の地点で地下水環境基準の79倍あり、有害物質が出たのは調査した201カ所のうち72カ所に上った。衝撃的な汚染として報道されている。
 これまでのモニタリングで、環境基準を超えたところがほとんどなかったことに比べれば、原因の究明が急がれることになる。可能性としては、①新たに地下水管理システムを動かしたことで汚染物質が吸い寄せられ濃度が高くなった、②今回の調査に問題があった、③今までの調査がずさんか、あるいは数値を意図的に改ざんしていた―などが挙げられる。
 小池氏にしてみれば、今回も同程度の数値が出ると想定していたに違いない。つまり、この調査結果を受けて安全宣言を出し、最短と見込まれていた今年末から2018年春の豊洲開場を目指すことでけりを付けようとしていたはずである。
 それが予想を超える高い値で、シナリオが完全に狂った。そこで20日の記者会見では、都の従来の方針を見直し、豊洲問題の原点にある「土地取得の責任者を明確にする」という方向にかじを切った。石原慎太郎元知事の責任を問うこともいとわない、ということだ。これによってメディアの目は石原氏側の動向に分散された。
 だが、豊洲市場を扱う小池氏の方針で腑に落ちない点がある。「なぜ地下水の環境基準を適用し、豊洲の安全性を判断しようとするのか」ということだ。この地下水を飲用や雑用水に使ったりするのであれば分かるが、基本的にはこの地下水を集めて処理して海に流すだけである。地下水の環境基準を適用する必要はない。
 もし地下に汚染があったとしても、土壌を浄化したり、封じ込めたりする。そして、地表にアスファルトやコンクリートを敷いて、汚染した土壌と直接、触れないようにすれば土壌汚染対策法上の問題はない。豊洲について大きな瑕疵はないはずである。
 もともとは、用地取得や施設整備に多額の費用がかかったという公共事業の在り方を問おうとしたはずである。それを利用者の「安全」「安心」という感性の問題に土俵を移したことで、解決が余計に難しくなってしまった。つまり、小池氏が戦略ミスをしたと言えるのではないか。
 今後、安全の問題がクリアされたとしても、消費者の安心を満足させることは至難の業である。この混乱を収拾するには、小池氏が頭を下げるなり、知事としての本当の意味での力量が問われることになる。
 

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