2017.01.25 議会改革
第8回 地域経営のルールとしての自治・議会基本条例(上)
☆キーワード☆
【自治・議会基本条例制定における議会の役割】
自治基本条例制定に当たって、住民が積極的にかかわることは必要であり、その意味では住民が行政と協働して条例案を練り上げることは重要である。同時に、自治基本条例は、住民自治のルールであるがゆえに、「住民自治の根幹」としての議会が主導性を発揮してよい。
飯田市自治基本条例は、首長ではなく議員提案によるものである。その提案に当たっては、議長の下に、住民(公募委員8名)、議員(8名)、行政職員(4名)、学識経験者(4名)によって構成される「わがまちの“憲法”を考える市民会議」が設置され(2004年5月設置)、その議論を踏まえて制定された。自治基本条例を議会が提案し制定することは、すでに三重県四日市市でも行われている。それは理念条例だった。飯田市自治基本条例は議会条文も充実させた自治基本条例であり(ニセコ町自治基本条例の改定(2005年)でようやく議会条文が充実し出した時期)、住民参加を充実させながら長期にわたって策定したことを考慮すれば高く評価してよい。なお、その後も飯田市議会は自治基本条例の見直しを積極的に行っている。
議員提案だけが議会が自治基本条例にかかわることではない。東京都多摩市議会のように、首長提案の自治基本条例案に対して、議会は首長の諮問に対して審議に当たって重要な役割を果たした住民たちの意向を尊重して大幅修正をした(2004年3月)。このことは、この文脈で理解してよい。
自治・議会基本条例は、住民自治のルールであるからこそ、住民が積極的にその策定にかかわることは当然である。制定過程における住民参加は、住民の自治意識を高める上での最良の機会である。そこで、策定過程はできるだけ門戸を広げることが必要ではある。しかし、多くの住民が議会に関心を持たない現状では、短期的に見れば積極的にかかわることは少ない。
議会基本条例制定に当たっても、こうした発想や取組は重要である。策定過程における議会によるパブリックコメント、公聴会開催、議会報告会での住民との討論などは不可欠である。とはいえ、住民の議会への関心が低いことを考慮すれば、住民参加は意味があるが、現状では残念ながらそれは広がらない。そこで「割り切り」が必要である。制定後に、住民と歩む議会を創り出すことで、議会への関心は高まり、議会基本条例の検証に当たって積極的に住民の声を聞くことを目指す必要がある。
2 議会基本条例の進展
これまで自治基本条例も議会基本条例もともに進化し続けてきた。ここでは、議会基本条例を中心にその進化を振り返っておこう。それぞれの議会は先人の努力に学びつつ、独創的な議会基本条例を制定している。議会運営の最高規範性、法令の解釈基準を前提にしつつ、またすでに指摘した議会運営の3つの原則(住民と歩む議会、議員間討議を重視する議会、首長等と政策競争する議会)を豊富化する方向は共通でありながら、個性ある条例は多い(表参照)。議会基本条例で規定された前文も同様である。前文のある法令は、従来は憲法、法律、条例を考慮すれば、憲法と教育基本法だけであった。今日、法律では基本法などで前文が規定されている。基本的な法律であり、その制定時の想いを明確化していることにより、規範性がある。自治基本条例や議会基本条例で規定された前文も同様である。なお、自治体を明確に「政府」と規定している議会基本条例もある(福岡県田川市、同豊前市、宮城県蔵王町、福島県南会津町。なお、多治見市は市政基本条例、東京都三鷹市は自治基本条例の中で明記)。