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2017.01.25 議会改革

第8回 地域経営のルールとしての自治・議会基本条例(上)

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【自治基本条例か、自治体基本条例か】
 「そもそも自治体の憲法とは何か」という命題も議論しなければならない。自治基本条例か自治体基本条例か(「体」を入れるかどうかに注意)、といった表現の対峙(たいじ)にも表れているように、近代憲法の原理から統治機関をチェックするものか(自治体基本条例)、それともそれを踏まえながら住民自治の軸となるべきものか(自治基本条例)、といった論点である。自治体は、中央政府とは異なる原理で構成されている。自治体は、権力機関である中央政府と共通の性格を持ちつつも、自治組織という性格も有している。自治体を考える場合、ライオンを檻(おり)に入れるような近代憲法の原理とは異なる発想を有することが必要である(江藤 2011:第8章、終章)(1)
 具体的には、近代憲法の発想では、議会を含めて地方政府(議会と首長等)は住民(この文脈では市民が使われることが多い)によって監視・チェックされることに力点が置かれ、協働や住民の責務は後景に退く。それに対して、近代憲法とは異なるという後者の発想では、住民は地方政府を創出するだけではなく、地方政府とともに地域経営を行う意欲が強調され、協働や住民の責務も肯定的に評価され条例に規定されることが多い。

(2)議会基本条例の意義
 北海道栗山町議会における議会基本条例制定から10年が経過した。筆者はこの間の議会基本条例の制定状況を「バクハツ」と呼んでいる。1つは、栗山町から始まる制定自治体数の増加である。歴史的には一瞬といえる10年の間に約800自治体が制定した。徐々に改良が行われ、議会間の「善政競争」が生み出されている。これを時代の趨勢(すうせい)と呼ぶのだろう。もう1つは、従来とは全く異なる議会運営の3つの原則を宣言したことである。住民と歩み、議員間討議を重視し、首長等と住民福祉の向上のために政策競争を行い、最終的に議決責任を全うする議会である。まさに、従来の議会運営とは一線を画すものである。新たな議会運営の宣言について、筆者は議会運営のコペルニクス的転換、あるいは議会改革は本史に突入したと特徴付けている。栗山町議会の議会基本条例は、確かに新たな議会像の金字塔ではあるが、普遍的な議会像を示したものであるために多くの議会もそれに続くことになった。なお、議会運営の中心的事項を議会基本条例で規定したことで、住民の直接請求の対象となり、議会は名実ともに「住民の議会」となる。
 新たな議会運営のこれら3つの原則は、それぞれの自治体の思いつきではない。地方自治の原理がまさにこれらの原則を生み出している。地方自治・地方政治は、国政と比較して、政府(代表制、自主的な権限財源)を有しているという共通項を有しながらも、大きな相違がある。
 国政における議会は二院制であり(世界中では一院制の方が多い)、国民代表制(一度選出されれば、国民全体の代表となる(議員の良心に基づき考え行動し表決する)=リコールはない)を採用しているのに対して、地方自治では議会は一院制である。住民がチェックするからであり、だからこそリコール制度をはじめ多様な直接民主制が導入されている。ここから、住民とともに歩む議会、住民参加を様々に導入する議会が登場する。
 また、二元制(議員とともに首長を住民が直接選挙)を採用していることを考慮すれば、首長等とは異なる立場から議会の意思を示す必要があり、そのためには、質問・質疑の場となっていた議会を議員間(そしてそれらの首長等との、また住民も参加する)討議空間に再編するべきである。
 このように、新たな議会像は地方自治の原則に由来している。とはいえ、中央集権制に基づく地域経営の時代にはそれが開花せず、ようやく地方分権時代に地域経営の自由度が高まることで開花した。
 なお、地方自治の原則は新たな議会像を示しているが、同時に議会の議決責任も同様に新たな議会運営を求めている。議会には地域経営における重要権限がほとんど付与されているといえる。会期の最終日に議決されている事件(事項)を考慮すればよい。議会には次のような特徴があるから、「驚くべき権限」が付与されているといえる。すべて合議制という特徴に由来している。①多様性(様々な角度から事象にかかわり、課題を発見できる)、②討議(議会の本質の1つ:論点の明確化、合意の形成)、③世論形成(公開で討議する議員を見ることによる住民の意見の確信・修正・発見)、これらにより万国共通、議会に地域経営の権限が付与されている。
 逆にいえば、この議会権限を全うすることに議会の真骨頂がある。この責任の自覚が議会改革を進める。議決責任は、説明責任を伴う。この責任を全うするためには、質疑だけではなく議員間討議が不可欠である。それを効果的に作動させるには、独善性を排除しなければならず、そのためには一方で調査研究が必要であり、他方では住民との懇談が必要である。ここに、新たな議会運営(3原則)がすべて結実している。つまり、議決責任の自覚は、新たな議会を創り出す。

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