地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2016.12.26 議員活動

自治体議員の被用者年金制度への加入

LINEで送る

全国都道府県議会議長会の決議文とその検討

 2016年7月27日に、全国都道府県議会議長会が採択した決議文は以下のとおりである。
 「地方創生が我が国の将来にとって重要な政治課題となり、その実現に向け大きな責任を有する地方議会の果たすべき役割は、ますます重要となっている。
 こうした要請に応えるため、地方議会議員の活動も幅広い分野に及ぶとともに、より専門的な知識が求められ、専業として活動する議員の割合も高くなっている。
 しかしながら、昨年実施された統一地方選挙では、道府県議会議員選挙の平均投票率が過去最低となったほか、無投票当選者の割合が高くなるなど、住民の関心の低さや地方議会議員のなり手不足が大きな問題となった。
 こうした中、選挙権年齢の引下げに伴い、若者に対して政治への関心を高めるための啓発活動の充実強化を図るとともに、サラリーマンの議員立候補、議員のサラリーマンへの復帰が行われやすいように、議員の年金制度を時代に相応しいものとすることが、人材の確保につながっていくと考える。
 よって、国民の幅広い政治参加や、地方議会における人材確保の観点から、被用者年金制度に加入して基礎年金に上乗せの報酬比例部分のある年金制度とするなど、地方議会議員の年金制度に関する法整備を早急に実現すること。 以上、決議する。」(下線は筆者)
 これは、自治体議員についても、被用者年金一元化が行われる平成27年10月から、基礎年金に上乗せの報酬比例部分のある被用者年金に加入できるようにしてほしいという主旨である。
 被用者年金一元化というのは、今後の公的年金制度の成熟化や少子・高齢化の一層の進展等に備え、年金財政の範囲を拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性を確保することにより、公的年金全体に対する国民の信頼を高めるため、厚生年金制度に公務員及び私学教職員も加入することとし、厚生年金制度に統一するというものである。具体的には、①厚生年金に公務員及び私学教職員も加入することとし、2階部分の年金は厚生年金に統一すること、②公務員等の保険料率を引き上げ、厚生年金の保険料率(上限18.3%)に統一するとともに、職域部分(3階部分)を廃止し、民間サラリーマン等との同一保険料・同一給付を実現すること、③遺族年金の転給など、共済年金と厚生年金の制度的な差異については基本的に厚生年金にそろえて解消することとなっている。
 全国都道府県議会議長会は、決議に基づき各政党への要請を行っているが、自治体議員が、安心して議員活動に専念し、また、議員を志す新たな人材確保のためにも、議員退職後の老後の生活を保障する年金制度が必要であると主張している。
 これまで、地方議員の間では、議会の果たす役割がこれまで以上に求められ、議員の活動領域が拡大して「専業化」しつつあるのが実態であるにもかかわらず、それに見合う議員報酬にはなっていない、多くの自治体で議員のなり手が不足しているし、議員を辞めた後の生計維持に不安もある等々の声が上がっていた。
 それだけではない。同じく住民によって直接選挙で選ばれ特別職の地方公務員である首長は、給与・旅費、各種手当、退職金が支給されているだけでなく、共済年金に加入しており、3期(12年)以上務めると平均月収の約44%分が特例加算(1)として上乗せ支給されている。これと比較して、自治体議員の場合は、公選職としての扱いが違いすぎるのではないかという思いもある。
 首長との比較における問題の本質は、首長が常勤職扱いになっているのに対して、自治体議員は非常勤職のような扱いになっていることである。これまで、筆者が繰り返し指摘しているように、法律では首長が常勤職で、議員が非常勤職であるとは規定していない。ただし、各自治体には、首長には「給与と旅費を支給しなければならない」、議員には「議員報酬を支給しなければならない」と義務付けている。両者とも有給職の扱いであるが、一般職の自治体職員の常勤、非常勤の区別と同列にはなっていない。
 首長と議員の扱いで典型的に違うのは、退職手当の有無である。退職金というのは、その性質上、非常勤の職員に対しては出すべきものではないというのが一般の考え方である。だから、非常勤扱いの議員には退職金は出ない。だからといって、常勤職とは法定されていない首長に退職金を支給していることに疑問なしとしない。議員にしてみれば、生活給としての給与が出ているわけではないし、4年後、議員を続けている確証はないし、退職金もない。自治体議員は職業として認知されているかどうかも定かでない。国会議員の場合は、国会法36条で、「議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる」と定められているが、自治体議員については、これに類する法律上の規定はない。せめて、基礎年金とそれに上乗せの報酬比例部分の受給を可能にしてほしいというわけである。
 しかし、4年任期の公選職について、当選したら自治体に就職することになるのか、任期が来たら退職することになるのか、1期で再立候補をあきらめても、老後保障としての年金を受給できるようにすべきだろうか。自治体議員の場合、他の仕事をしながら議員をしている「兼業議員」も少なくなく、厚生年金に加入している場合もあり、全ての議員が専業化していると扱うのは行き過ぎではないかといった疑問も出てくる。
 確かに、地方では、無投票当選も増え、議員のなり手が減少傾向にある。しかし、基礎年金に上乗せの報酬比例部分の受給を認めたからといって、新たな候補者が出てきて、議員の新陳代謝が進むとは限らない。また、被用者年金制度への加入となれば、各自治体(雇用主)の公費負担が必至となるから、住民の理解と賛同が得られるかどうかという疑問も起こる。自治体議員への風当たりが強まることも容易に予想される。大阪では、大阪維新の会も自民党大阪府議団も全国都道府県議会議長会の決議に反対している。厳しい財政状況の中で公費負担を増やすことになるからである。担い手不足の問題や不安定な身分ということはあるにしても、老後の保障は一切なくても頑張る、それくらいの覚悟を持って議員をしなくてはならないという気概があってもよい。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る