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2016.12.26 議員活動

自治体議員の被用者年金制度への加入

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東京大学名誉教授 大森彌

 都道府県議会議長会を中心に地方議会3団体から「地方議会議員の被用者年金制度加入の実現」という要請が自民党などに出された。民主党政権下の2011年6月に廃止された「地方議員年金」が、「復活」に向けて動き出していると報じられた。自民党本部総務部会に「地方議員年金検討プロジェクトチーム」(座長・伊藤忠彦)が設置され、議員立法による法案提出を予定し、各党の地方議員にも関わることから国会での全会一致の成立を目指すとしている。
 折しも、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認や年金制度改革法案をめぐる国会審議で与野党間の対立が激しさを増す中、自民党内で、全会一致による成立は難しいとの見方が強まったため、今国会の法案提出が見送られる公算となった。富山市議会で辞職者が相次ぐ事態に見られたように政務活動費の不正受給問題も受け、与党内には「地方議員自ら襟を正すのが先だ」との声もあり、先送りの一因となっていると伝えられた。
 本連載は「進め!自治体議会」であるが、自治体議員にも被用者年金制度への加入を認める法整備を「進めよ」と言い切るには、検討すべき問題点も少なくないのではないか。今回は、これまでの経緯を振り返りつつ、この提案の特色と問題点を考えてみよう。

地方議員年金の復活か

 1958年4月に「国会議員互助年金法」が成立し、これを受けて、1961年7月に任意加入の「地方議会議員互助年金法」が制定された。その翌年、「地方公務員共済組合法」に統合され、強制加入の議員年金制度として再発足している。年金の原資は、議員本人による掛金・地方自治体が負担する公費負担金・運用益である。その運営は、都道府県・市区・町村別に3つの特殊法人「地方議員共済会」が行い、総務大臣が監督していた。一般の国民年金や厚生年金の受給資格は加入期間が25年以上であるが、議員年金は、同じ議員を3期12年以上務めれば65歳から受け取れ、12年未満の場合は一時金(退職金)が支給されることになっていた。
 議員だけに特化した年金制度とは、いかにも特権の性格が強かった。口の悪い住民からは、「12年、さしたる仕事もしないで、その間、相当の報酬・ボーナスをもらいながら、議員を終えれば特別の年金も付くのって、いい職業だよね」と皮肉をいわれた。せめて3期は議員を続けたいという議員もいたし、「12年たったから、交代だ」ともいわれた。議員年金は、受給資格が短期間で得られ、他の年金と併せて受給できるなど、議員だけが二重三重に税金の恩恵を受けられる不公平な制度だといわれた。この互助年金は公的年金ではないため、別に、議員は公的年金(国民年金など)に加入しなければならないのだから、それでいいではないかともいわれた。
 実際には、「平成の大合併」に加えて、議員定数の削減や受給者の長寿化により、年金を支える側の現職議員が減り、受給者が増えた。そこで、2003年4月に、掛金率増、特別掛金率増、公費負担率増、給付削減等の制度改正が実施された。さらに、2006年6月に「地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律」が成立、2007年4月1日施行となり、年金減額の措置がとられた。
 2008年12月、2012年度にも地方議員年金財政が破綻するとの試算がまとめられ、これを受け2009年春には総務省内に有識者会議「議員年金制度検討会」が設置され、同年11月2日に議員年金制度そのものの廃止案を検討することとなった。有識者会議は廃止案のほかに存続案も2つ提示していた。同年3月11日に地方議会議員年金を廃止する改正地方公務員等共済組合法案が閣議決定され、5月20日に参院本会議で可決、成立した。これにより2011年6月1日で地方議員年金制度は廃止となった。
 廃止後の経過措置として、すでに年金を支給されている元議員の場合は廃止前の議員年金制度の給付が継続され、その給付の財源は各地方自治体が公費で負担することになっている。年金資金が枯渇した後では、給付終了まで税金の投入が続いている。
 地方議会議員年金制度の廃止法案を審議した際、衆参両院総務委員会は、地方議会議員の新たな年金制度について検討を行うよう附帯決議を付していた。しかし、地方議会議員のみを対象とする年金制度を改めて創設することは現実的ではない。国会議員互助年金法も廃止になっている。もし年金というならば、既存の被用者年金制度へ加入する道を検討する以外にない。だから、廃止になったような議員年金制度の「復活」はない。しかし、基礎年金に上乗せの報酬比例部分を受給するというのであれば、なぜ、そういう特別な扱いを自治体議員についてするのか、広く住民が納得できる説明が必要である。

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