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2016.11.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その17)

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 これまで16回にわたり、総務省に設置された「地方議会に関する研究会」の最終報告書である『地方議会に関する研究会報告書』(以下『報告書』という)を検討した。「第V章(1) 地方議会における政党及び選挙制度のあり方」の「第1節 地方議会における政党等のあり方」に沿って政党・会派について論じてきたが、『報告書』では「全国政党」と「地域政党」の問題に触れていない。前回は全国政党と、保守系無所属会派という事実上の〈地域政党〉について触れた。今回は、「地域政党」について考察してみよう。

野党系地域政党

 前回触れたように、都道府県議会レベルにおいて、カネとポストの配分基準としての政党の役割・機能から鑑みるに、全国政党化するメリットがあるのは、国政与党系統だけである。つまり、自民党と公明党のみである。したがって、国政野党と一体となった導管を形成する全国政党化のメリットは、ポスト(選挙での相互支援)の面ではともかく、カネの面ではほとんどない。したがって、野党系の地方政治家は全国政党化するメリットは大きくない。こうして、国政野党に近い政策指向を持ったとしても、全国政党化する必要性はほとんどなく、都道府県議会レベルでの会派又は地域政党で充分である。それは、市区町村議会レベルでも同様である。
 沖縄社会大衆党が典型的な地域政党である。与党系の立法院・県議会会派は、当然ながら本土・中央直結が重要であり、歴史的には、本土政党=全国政党である自民党・公明党に系列化されてきた。これに対して、野党系は、必ずしも本土政党=全国政党に系列化するメリットがなかったので、社会党・民社党・共産党や民主党・民進党と沖縄社会大衆党は別個に存在してきたのである。もっとも、自民党という導管が、カネとポストの配分ではなく、単に基地の押しつけの導管になると、沖縄県内の自民党自体が、本土の自民党から離反することにもなり得るが、他方で、基地はカネの導管だという発想もあり得るので、「元祖自民党」と「本家自民党」のように、国政野党系(自大派)と国政与党系(事大派)とに再編がされることもあり得よう。
 このほか、生活者ネットワークというものが、地域政党(ローカル・パーティー)として、主として市区町村議会レベルでは存在してきた。これは、消費生活協同組合等の生活に密着した地域的争点を重視する観点で組織化された地域政党である。政策指向は国政野党的といえるが、国政野党という全国政党として組織化されるメリットはあまりない以上、独自の組織を形成してきたのであろう。

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