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2016.10.25 議会改革

第5回 地方政府形態としての二元的代表制の選択 ――二元的代表制=機関競争主義(下)――

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(2)多様な地方政府形態と選択の可能性
 諸外国では、二元制(二元的代表制かどうかは問わず、議員も首長もともに住民が直接選挙するという意味)を採用している自治体もあるが、一元代表制などそれ以外の地方政府形態を採用している自治体もある(竹下 2008、山下 2010)。諸外国の多様な地方政府形態は、地方選挙制度や政党制とも密接に関係しているので、本連載の地方選挙制度の回において詳細に検討する(江藤 2011b)。ただし、あらかじめイメージを持っていただくために、限定的であるが、アメリカの地方政府形態の一部を確認しておこう(図1参照)。アメリカは「人種のるつぼ」であるだけではなく、「地方政府形態のるつぼ」でもある。ここに例示した市長―議会型にも強市長型と弱市長型があるし、例示した以外にもタウンミーティング型などがある。どれも歴史的産物だといってよい。

図1 アメリカの地方政府形態図1 アメリカの地方政府形態

 結論を先取りすれば、先進諸国の地方政府は、議院内閣制、議会が首長を選出する制度、及び議会自体が執行機関を兼ねる制度というような一元代表制(議会一元制)の系譜が多いと思われる。
 もちろん、諸外国には議員と首長を直接住民が選挙する二元制の系譜の地方政府形態も存在する。より正確にいえば、長期的に見ればその選択の傾向が強まっているともいえる。なお、ここで“系譜”と曖昧な言葉を用いているのは、二元的代表制の「的」に含まれる要素の1つである首長への不信任議決、議会解散、議員選挙という議院内閣制要素がないからである。そもそも、諸外国では二元的代表制、二元代表制という用語は用いられていない。
 議院内閣制の場合は当然だが、二元(的)代表制でも、政党に基づく政治が強力という状況を踏まえて、議会と首長の対立激化を回避するために、首長と議会の多数派を一体化させる選挙制度が必要となる。例えば、政党が地域に根ざした政党選挙を前提として、首長が属する政党に加重に議会議員多数派を配置するような加重代表を行う「首長と議員のパック投票」制度(当然、同日選挙)などである(イタリア)。このような装置が設定されていない場合でも、対立激化に際して両者を調整する「中立的な調停者」が設置される場合もある(例えば、ドイツのヘッセン州)。
 日本の地方自治は議院内閣制や議会による執行機関としての首長の選出制度ではない。二元制ではあるが、議会多数派と首長とを一致させる融合型の地方政府形態を採用する基盤はない。つまり、非政党選挙、非加重代表、議会と首長の非連続(政策の一致を前提としない)という選挙制度になっている。また、両者は同日選挙とはなっていない。ようするに、一元代表制、あるいはそれに親和的な後述する融合型の存立基盤が希薄である。この制度化は、憲法改正も含めて大いに議論されるべきである。これら全体的な地方政治制度を議論し総体的な提案が中長期的には必要である。

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【日本国憲法における地方政府形態の選択の可能性】
 憲法では、議会の設置、首長と議事機関としての議会議員(及び法律で定めるその他の吏員)の選挙が規定されている(憲法93)。その意味で、二元制である。そして、地方政府の組織や運営は、地方自治の本旨に基づき法律で定めることになっている(憲法92)。地方自治法により、①首長は、独任制の執行機関として、団体を統括しこれを代表し(自治法147)、団体の事務を管理しこれを執行する(自治法148)。②首長は、議会の同意を得て副知事・副市町村長を選任する(自治法162)。
 憲法上、地方政府形態の選択制はどこまで可能だろうか(文献も含めて、末井 2009)。執行機関としての首長は、憲法の文言には表れてはいないが、直接に規定しているとする議論がある。住民によって選挙された首長は、議会に対して「勢力均衡」を行いながら地域経営を行うからである。したがって、首長が担っている業務の大部分の事務を実質的に行う職を首長の下に設けるなど、首長の権限を空洞化させるような改革は、憲法上問題となる。これが通説の系譜である。
 もう一方には、憲法上執行機関のあり方は、立法政策に委ねられているという議論もある。より具体的にいえば、議員が立法と行政を統合する委員会を構成しその議長をもって自治体の代表にする制度(評議会制度=委員会制度)、行政の執行を市支配人(シティ・マネージャー)に委ねる制度などが想定できる。もちろん、首長と議員を直接住民が選挙することを前提としながらも、地方政府形態の選択制や現行制度からの転換を可能としつつも、論者によってその範囲、選択すべき地方政府形態像は様々である。
 これらの議論を念頭に、地方政府改革は議論されなければならない。本文で議論する議会内閣制では、議員を含めた首長を主導する内閣を設置し、そこが執行機関となることを想定している。通説からも許容範囲であろう。

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