2016.09.26 政策研究
第3回 政策立案におけるRESASの活かし方(下)
●地域のお金の流れの全体像
それでは、まず、RESASが提供している「地域経済循環図」を見ながら、地域のお金の流れの全体像を確認したい。
図6 地域経済循環図
この図は、どこから所得を稼ぎ、その所得をどこに使っているかというお金の流れの概要を把握することができるもので、産業連関表をコンパクトにまとめたものといえる。ここでは、先ほどの人口分析と同様に長野県原村を対象とした地域経済循環図から、当該地域の経済の概況を把握したい。まず、図の真ん中にある「分配(所得)」の項目である。これは、地域で稼いだ所得がどのように分配されているかということを示したものであるが、原村の場合、地域で稼いだ所得の半分近く(グラフの赤い部分)が域外から獲得されたものであることを表している。つまり、原村に居住しているが、原村以外に勤務し、その所得を原村に持ち帰っているということを意味している。続いて、図の右側の「支出」の項目を確認したい。これは、地域で稼いだ所得も含めて、その地域に対する支出がどのような形で行われているかということを表しているグラフである。原村の特徴は、地域外への流出(グラフの白い部分)が多いことである。中でも、「民間消費額」は72億円も地域外へ流出しているが、これは地域の消費需要に対応できるだけの産業が地域に存在せず、域外で消費されてしまっているということを意味している。また、「その他支出」の地域外への流出も大きい。「その他支出」は、RESASによれば「政府支出、地域内産業の移輸出入収支額等」を表しているものであるが、これらについて地域外への流出が多いということは、地域外に対して商品・サービスを移出する以上に地域外から移入している、つまり、地域として貿易赤字状態であるということである。それぞれの具体的な金額については「詳細を見る」というボタンから確認できる。
●域外市場産業は何か?
このように全体としては貿易赤字状態の原村であるが、地域の外からお金を獲得できている域外市場産業はあるだろうか。ここでは、「移輸出入収支額」と「特化係数」から地域の基幹産業である域外市場産業を明らかにしたい。
まずは「移輸出入収支額」である。移輸出入収支額とは、域外への移出に伴う収入額から域外からの移入に伴う支出額を差し引いたもので、プラスの産業は域外からお金を獲得している基幹産業(域外市場産業)であることを示している。RESASで、移輸出入収支額を産業別に表示したものが図7である。このグラフは、RESASメニューから「地域経済循環マップ>生産分析」とたどることで確認することができる。
図7 産業別の移輸出入収支額
図7は「移輸出入収支額」を当該金額が大きい順に表示したものである。なお、産業ごとに2本のグラフが表示されているが、移輸出入収支額は左側のグラフで、右側は地域における生産額の構成割合を表している。2本のグラフのうち左側の移輸出入収支額が大きいのは「農林水産業」、「その他の製造業」、「金属製品」等で、これらが原村の域外市場産業になっていることを確認できる。一方で、グラフの右側の方に「サービス業」があるが、これは「生産額の構成割合」は原村の産業の中で最も高い割合を占めているが、移輸出入収支額はマイナスとなっている。