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2016.09.26 議会改革

第4回 二元的代表制の「的」の意味を考える――二元的代表制=機関競争主義(上)――

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【二元的代表制、二元代表制の誕生】
 日本行政学会での懇談でも、また栗山町議会基本条例制定10周年の際の懇談でも(2016年)、「二元代表制という用語はいつから、誰が提案したのか」という質問を受けた。本文でも触れるように、西尾勝の提案である(東京都 1977(西尾勝執筆))。正確には「二元的代表民主制」である。東京都(1977)のレポートに依拠しているが、それだけではなく、西尾「過密と過疎の政治行政」日本政治学会編『55年体制の形成と崩壊――続 現代日本の政治過程』(日本政治学会年報、岩波書店、1977年)でも用いられている。その後、大森彌(「的」を強調)などが積極的に用いている。
 「口語としてはそれより早く1970年ころから使われていた」。革新自治体における住民参加を擁護する理論的基礎として誕生したといってよい。国政とは異なる地方自治を創り出すための用語である。「二元」の文字は、「一元的統合(議院内閣制)」と「二元的統合(大統領制)」によって政治統合を類型化した松下圭一の理論からヒントを得てもいる。議院内閣制の要素も加味したことで、「あえて『二元代表制』を用いた」とされている(神原 2011)。
 ここからも分かるとおり、二元(的)代表制は、議会主導に対して首長による住民参加を積極的に位置付ける理論的基盤になっている。首長の正統性の強調である。それに対して、今日強調されている二元代表制、二元的代表制は、逆に議会の役割を強調している。地方分権改革の幕が開く以前に議会が強調されていた歴史は興味深い。もちろん、そこでは、議会と首長の政治的基盤が同一であり革新首長の誕生によるそれらの亀裂が生まれたいわば「疑似二元代表制」が作動し始めた結果である(神原 2011、江藤 2011a)。
 なお、「機関競争主義」は機関対立主義をベースにしているが、橋場利勝元栗山町議会議長が筆者との話の中で提案してくれた用語である(「機関対立よりも機関競争の方が妥当である」2007年3月栗山町にて)。

 筆者も著作の中で、二元的代表制(二元的代表民主制)を紹介した後で、説明をせずに二元代表制を用いてきた(江藤 2004(初出2000))。筆者は、地方分権時代の自治のあり方として従来から活用されてきた用語とは異なる用語を用いたかったこと、「的」、「性」といった曖昧な言葉を用いたくはなかったこと(ある著名な行政学者から「的性言葉」を使わない指導を受けていた)がその理由だった。それ以上に、首長主導に対して「住民自治の根幹」としての議会を理論化するために、「議会迂回(うかい)論」批判として登場した二元的代表制(筆者の目的と逆のベクトルであった)と異なる用語を活用したかったからである。しかし今日、筆者の意図とは異なる意味の二元代表制が広がりつつあることを危惧している。
 本連載は、現在流布している二元代表制の概念史を概観することを目的としているわけではない。二元代表制を再考することが目的である。住民参加を強調するとともに、両機関の調整の場である「討議の広場」としての議会を想定したい。同時に、二元代表制であれ、二元的代表制であれ、そこに矛盾が内包されていることによって別の地方政府形態として提案されている一元代表制の射程についても検討したい。

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【首長主導型(大統領)民主主義の射程】
 橋下前大阪市長や河村たかし名古屋市長のような首長主導型(大統領)民主主義は、一過性のものではない。次のような制度があるところでは、常に生起される。議会と首長が同じ正統性根拠(直接選挙)を有し、相互にけん制する制度とともに、時として(非常事態や議会が開催されていないとき)首長が議会の権限を奪うこと(専決処分など)、さらに対立した場合には、住民に直接問う直接民主制が設置されていること、である。
 通常、問題なく作動していた制度が例外状況や議会が首長の意向に反対の場合に、亀裂が生じ、首長が住民を味方につけて議会を否定して、政治運営を行うことが可能な制度である。
 日本の地方自治と類似していると思われるワイマール体制を評して、安世舟は次のように規定している。ワイマール憲法は、「確かに理論的に形式的権力均衡を見事に制度化した」が、同時に「議会の動向次第では議院内閣制へ発展するか、あるいは大統領制へと発展するかの両方の可能性が秘められていた」と指摘している。この「両方の可能性」は、日本の地方自治制度にも妥当する(江藤 2011b)。

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