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2016.09.12 政策研究

第2回 政策立案におけるRESASの活かし方(上)

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②政策立案
 ある事象についての要因を一定程度把握できたところで、次は政策案を立案していくプロセスに入ることになるが、基本的なアプローチは、前述の「要因把握」と同様である。つまり、ある事象に関する「原因と結果の関係群」を把握し、最も確からしいと思われる関係を「政策仮説」として採用していくということである。
 たとえば、先ほどの「有配偶率」を例に、「有配偶率」を高めるための方法、ここでは「婚姻率」を高めるための方法を探ってみたい。婚姻率は長期的に減少を続け、「1970年代前半と比べると半分近くの水準」となっている(2)。「平成26年度『結婚・家族形成に関する意識調査』」(内閣府)によれば、その理由として、「適当な相手にめぐり合わないから」(54.3%)がトップとなっているのに続き、「自由や気楽さを失いたくないから」(27.2%)、「結婚後の生活資⾦が足りないと思うから」(26.9%)などが挙げられている(3)。このような状況の中で、各自治体は出会いの場を提供する事業を行ったり、結婚観や家庭観を醸成するような事業を行い(4)、結婚していない理由の上位2つに応えようとしているが、それは結婚しない原因の根本要因に応えうるものであろうか。むしろ、3つ目の「生活資金」に対する不安感が解決すべき根本的な課題ではないだろうか。たとえば、先ほどの「平成26年度『結婚・家族形成に関する意識調査』」では「将来の結婚意向」についても調査しているが、正規雇用者より非正規雇用者の方が、また、年収がより少ない方が結婚意向が少なくなるという結果になっている(5)。そもそもの結婚意向がなければ、それは出会いの場の問題ではなくなる。また、少し前の分析になるが、平成13年の国民生活白書では「独身女性と既婚女性のフルタイム就業率の格差が大きい地域ほど女性の未婚率が高まる」傾向にあることが指摘されている。つまり、結婚後に安定した職につける地域かどうかということと未婚率との間に関係があるというのである。以上の分析は決して十分なものではないが、結婚というものが出会いの場や結婚に対する考え方の問題としてだけではなく、「仕事」、「収入」の問題でもあると捉えなければ根本的な問題解決につながらない可能性があることは少なくとも確認できる。そして、前述のように、結婚しない理由の一番目は「適当な相手にめぐり合わないから」というものであったが、誰もが結婚生活を送るのに心配する必要のない程度の収入を得られるようになったとするならば、相手の選択肢が増える可能性、つまり、適当だと考える相手にめぐり合う可能性が高まることも仮説としては考えられるのである。
 このように、ある1つの事象は、様々な要因・環境の影響を複合的に受ける中で発生している。だからこそ、その事象を解決・改善する手段の選択(=政策決定)にあたっては、目の前にぱっと出てきたものに安易に飛びつくのではなく、鳥瞰(ちょうかん)的な視点から、また、事象(データ)と事象(データ)の関係性・因果関係を認識しながら検討されなければならない。いわゆるロジックモデルが求められるのも、そのためである。

3 RESAS&各種統計データの使い方

3.1 人口分析  まずは「人口」に関する分析である。ここでは、「人口の移動状況(社会動態)をなるべく詳細に把握したい」というケースを想定して、分析を進める。サンプルとして、長野県の原村を対象に分析をしてみたい。原村は、東京から高速道路や特急を使えば3時間程度で訪れることができる、人口7,570人の村である(6)

●自然増減・社会増減の推移
 人口の移動状況を見ていく入口として、原村におけるこれまでの自然増減・社会増減の推移を見たい。それらについて、RESASではいくつかのグラフを提供しているが、「自然増減・社会増減の推移(散布図)」が全体的な動きを把握するのに適している。RESASメニューから「人口マップ>人口増減」と選択していくと、図2の散布図が表示される。

図2 自然増減・社会増減の推移(散布図)図2 自然増減・社会増減の推移(散布図)

 これを見ると、原村は1995年以降、出生数から死亡数を減じたものである「自然増減」はマイナスの方向で拡大してきたが、一方で、転入数から転出数を減じたものである「社会増減」は多くの年でプラスとなっていた。グラフ上で最も直近の2014年においても、60人の転入超過という状況である。
 では、このような状況はどのような要因によってもたらされているのだろうか。以降では「誰が」、「どこで」という2つの視点で社会動態の要因を探りたい。

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