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2016.08.25 政策研究

【フォーカス!】熊本地震

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

本当にすべきことは

 4月に起きた熊本地震は地震学者にも大きな衝撃を与えたようだ。一つは震度7が2回もあり、本震の後の余震の方が大きく、ついには前震と本震と言い直したこと。そして、熊本の人たちがこの地域に大きな地震が来ると思って備えていなかったことだ。
 それらに対する回答を学者たちはこういう形にした。まず、政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会の報告を受け、気象庁は8月19日、大地震が起きた後に出していた地震活動の見通しについては、「余震」という表現を使わないと発表した。「同規模の地震に注意」などと呼び掛けて注意喚起するという。
 確かに、熊本地震の最初の地震の翌日、気象庁は「震度6弱以上の揺れとなる余震が発生する可能性は3日間で20%」などと記者会見で説明していた。このため、その翌日に起きた2度目の震度7の時、もう大きい地震はないと思って自宅に戻っていた人がいた。これが被害を拡大させたとの批判が出ていたための対応だ。
 もう一つが、主要断層のリスクの評価については、30年以内に大きな地震が起きる発生確率ではなく、4つのランクに分けることにしたことだ。リスクが高い順に「Sランク(高い)=地震発生確率が3%以上」「Aランク(やや高い)=発生確率が0.1~3%未満」「Zランク=発生確率0・1%未満」「Xランク(不明)=確率は不明だが地震発生を否定できない」とするという。
 熊本地震を引き起こした布田川断層帯の「布田川区間」の発生確率は、地震前までは「ほぼ0~0.9%」で「やや高い」と表現されていた。これを4ランクに当てはめると「A(やや高い)」となる。
 全国で97ある主要断層帯のうち発生確率を公表している断層に4ランクを当てはめると、3割の29断層がSランクとなる。
行政機関や科学者としては、これで責任を果たしたことになるのだろう。だが、実際に被害の大きかった地域を歩いてみると、不十分だという思いが湧く。
 甚大な被害を受けた建物、地域は並んでいるように感じられる。活断層の直上かその周辺に、被害が集中するということだろう。そこから離れた場所には、何事もなかったように建物が続き、日常の生活がある。少しの距離の違いが人の運命を分けるのである。今すべきことは明白なはずだ。
 徳島県は既に、不特定多数が集まる施設などを活断層の直上に建てられないものとして、「南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例」で示している。津波被害を受ける地域の都市計画を制限する「津波防災地域づくりに関する法」も制定されている。
 防災の最善の方策は「危ない場所にできるだけ住まない」ということである。科学者がいくら集まっても地震の予知はできず、余震がどうなるかも正確には予想できない。科学には明らかな限界がある。
 活断層は日本に約2千あるといわれている。これらの位置を詳細に公表した上で、関係する自治体は、被害が起きる可能性の強い地域への土地の利用、建物の立地については、都市計画や条例などで、できるだけ抑制すべきである。
 人口減少局面に入ったいまだからこそ、長期的な視野での安全・安心なまちづくりを始めるべきである。そのためには首長と議員のリーダーシップが不可欠であることは言うまでもない。
 
 

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