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2016.08.10 政策研究

【フォーカス!特別編】全国知事会議~隠れテーマは東京一極集中~参院合区解消で決議を採択~「安倍1強」にどう対峙

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地方創生の本気度

 知事会のテーマが「地方創生」であり、その裏側にある真のテーマが「東京一極集中の是正」である。参院選では「1億総活躍社会の実現」が前面に出たこともあり、安倍政権が進める「地方創生」に対しては「最近は聞かなくなった」と強い不満を口にする知事が目立った。
 さらに政権が取り組む中央省庁など政府関係機関や企業の本社機能の移転は、文化庁以外の目立った動きはない。東京一極集中は収まるどころか加速している。ローカルアベノミクス、地域経済の好循環といいながらも地方には果実が見えない。これらの不満が「地方創生の本格実現のための特別決議」の採択につながった。決議は進まない地方創生について、国の本気度を問い直したといえる。
 決議は「1億総活躍社会は地方創生から」とのサブタイトルがあり、直ちに断行するよう求める措置として、①少子化対策及び子どもの貧困対策の抜本強化、②地方への人の流れを生み出す取組の促進、③国家戦略としての政府関係機関の移転の推進、④地域の将来を支える人材育成の強化、⑤防災・減災、リダンダンシーの確保、⑥地方創生に関連する予算の十分な確保、⑦2016年度補正予算における思い切った措置、⑧地方創生推進交付金の自由度向上と規模の拡大―の8項目を求めた。
 例えば、③の移転推進は地方創生の目玉として政府が打ち出した政策である。これに対し決議は「道半ば」と指摘した。8月末に、明確な移転の方針が示されなければ、地方の不満はさらに高まるだろう。その上で「今後も国家戦略として次のステージの構築を図ること」と、省庁移転の第2弾、第3弾を求めている。だが、政府にはその考えがないようだ。知事からは、改めて移転の数値目標の設定を求める意見もあった。
 東京一極集中是正のため、東京にある大学の定員管理を厳格にするよう求める意見も出された。愛知県によると、大学進学に際して東京の大学への流入超過は年間7万人を超える。全国の学生数に占める東京のシェアは人口の10.6%を大きく上回る25.6%として、東京への大学生の集中・流入の制限を求めた。
 地方創生はパンドラの箱である。政権は2013年の参院選以降、衆院選、統一地方選を通じて「地方創生」、「アベノミクスの効果を全国津々浦々まで届ける」と言い続けてきた。総合戦略をつくらせ、人口減少問題に対応するよう求めた。その結果、地方側はその深刻さを再認識し国に本気の対応を求めているのである。
 安倍政権の支持率が高く、アベノミクスによる税収の確保が続いている間は、地方に予算を手厚く配分することで、地方の反乱を食い止めることはできる。しかし、中央省庁の地方移転も含めた対応が不十分で、しかも景気の後退で地方交付税の削減などに踏み込めば、地方側も対決姿勢を示すことになるだろう。

地方税収の格差

 知事会では、古くて新しい問題も浮き彫りになった。人口減少・高齢化が進む中で、東京など都市と地方の間には税収などの格差が深刻になってきた。都市への人口や産業の集中が今後も進めば、偏在はさらに拡大するのは明らかだ。
 これに対して政府は、企業が地方に納める法人住民税の一部を「地方法人税」として国税化し、地方交付税として税収が少ない地域に配分している。だが、税収を吸い上げられる都市側の反発も強い。知事会議でも神奈川県の黒岩知事が「数の力でわれわれ大都市部が押し切られている。格差と言っているが、逆格差みたいなことを感じている」と知事会の在り方を批判、その上で「2015年度税収が過去最高であったにもかかわらず、47都道府県のうち東京都を除いて交付団体だ。要するに地方の自主財源が足りていない。そんな中、地方同士で財源を奪い合って一体どうするのか。歳出比率が地方対国で6対4、税源配分では4対6。この大本を知事会の創意をもって、闘う知事会として国に向かっていくということが本筋だ」と述べた。
 この考えは昔から唱えられてきたが、国と地方の間の力関係からは抜本改革にはなかなかつながらない。「地方税財源の確保・充実等に関する提言」では、地方創生の推進、消費税率引き上げ再延期に伴う対応、地球温暖化対策のための税財源の確保、地方一般財源及び地方交付税の総額確保という4点について要望がまとめられた。
 法人住民税、消費税というのは、地方間でも税収の格差が大きい。これを是正するには、本来なら地方法人税といった国の関与を受けたものではなく、地方自治体の間で自らルールをつくり、税収の格差を是正するのが地方自治の本旨に沿った措置である。
 「都市と地方のウィンウィンの関係をつくる」といったキャッチフレーズだけでは機能しない。知事会は「格差を克服し活躍を進める地方創生時代の地方分権改革」を今後、議論することを決めた。中小企業や農林水産業に対する「空飛ぶ補助金」の見直し、国と地方の協議の場における分科会の設置、地方版ハローワークの実効性アップなどがテーマに挙がっている。
 都市と地方の真の共存関係をどうつくり上げるのか。住民に身近な自治体が主導権を発揮し、国に頼らず、地域間の格差の是正に取り組むことを期待したい。同時に、首都機能移転が東京都の反対で立ち消えになったように、都の協力がなければ、地方への政府関係機関や大学などの分散は進まない。小池都知事が一極集中や格差の是正に今後、どのような考え方を示すかに興味が集まっている。

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