2016.08.10 政策研究
第2回 ヘイトスピーチ解消法及び大阪市ヘイトスピーチ対処条例の検討
3 ヘイトスピーチ解消法の概要
(1)趣旨及び目的
ヘイトスピーチ解消法は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、その解消に向けた取組について、基本的理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的としている。
前文は、①近年、不当な差別的言動により、本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(本邦外出身者)が多大な苦痛を強いられるとともに、地域社会に深刻な亀裂を生じさせているとの認識を示し、さらに、②このような事態を看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではないというこの法律の趣旨について規定するほか、③このような不当な差別的言動は許されないことを宣言している。
(2)「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の定義(2条)
ヘイトスピーチ解消法における「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、以下の要件のすべてに該当する言動をいう。
① 専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的の言動であること(言動の目的)
② 公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑する態様の言動であること(言動の態様)
③ 本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由とする言動であること(言動の動機)
④ 本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する言動であること(言動の効果)
(3)国及び地方自治体の責務(4条)
そして、4条は、ヘイトスピーチ解消法における国及び地方自治体の責務について、以下のように定める。
① 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施するとともに、地方公共団体が実施する本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有する。
② 地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努める。
(4)基本的施策(5条〜7条)
また、基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとし、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとされた。