2016.07.25 議会運営
第48回 議員のヤジの取扱い
7 不規則発言
議会における発言はすべて議長の許可を得て発言することが必要であり、許可を得た発言は法的な効果を有する正規の発言として取り扱われる。
これに対し、議長の許可を得ない発言は私語と同様でいわゆる不規則発言となり、原則として許されるものではない。この不規則発言の代表的なものがヤジである。
ヤジと拍手は議会の花といわれるが、議会の審議を活性化する相づちや掛け声等によるヤジは、場合によってその効用からある程度黙認されるが、明らかに発言の品位を欠いた特定の人格に対する誹謗(ひぼう)や中傷等のヤジを、住民の代表であり、住民の模範たることが求められている議員が行うことは許されない。
なお、簡易表決における異議なしや動議に対する賛成の発言は、議長の許可を得ない発言であるが、議長の問いに対して発言されるものであることから議長の許可を要せず、法的な効果を有する発言となることに留意を要する。
8 不規則発言に対する発言者の対応
議長に発言を許可された者が発言している際に不規則発言がなされても、発言者は不規則発言に対し応酬することはできない。
議長に発言を許可された議員は、事前に議長に対して提出された発言通告書の内容の範囲内でしか発言することができないため、不規則発言に対する応酬発言は通告外の発言となるため、不規則発言に対し無視して発言を続けることとなる。
しかし、発言者が看過できないような内容の不規則発言の場合には、議長に対し注意を喚起する発言を述べ、自らの発言の保障を確保することができる。さらに発言終了後に、必要に応じて地方自治法133条に基づく処分要求又は同法134条に基づく懲罰による対応をすることもできる。
ここで議長の許可を得た発言者が不規則発言に応酬した場合、議長は地方自治法129条に基づき発言者に対し注意し、複数回注意しても応酬をする場合には発言を禁止する命令を下すこととなる。
なお、不規則発言を述べた者に対しても議長は注意するが、一般的には不規則発言を述べた者を特定することが難しいため、議場全体又は不規則発言があったと思われる場所に対して注意することとなる。
ちなみに実務上は、不規則発言とそれに対する応酬発言は瞬間的なことが多いため議長による注意を行うことは難しい。
9 結論
以上より、議長の許可を得て発言した議員に対するヤジがなされても、当該議員はそのヤジに応酬する発言をすることはできず、議長に対してヤジへの注意勧告発言をするか又は発言後において地方自治法に基づく懲罰又は侮辱による処分要求等により対応するのが適当である。