2016.07.25 議会運営
第48回 議員のヤジの取扱い
4 無礼の言葉
地方自治法132条における無礼の言葉とは、議員が意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員その他の関係者の正常な感情を反発する言葉をいう。
ここで留意を要するのは、議員の発言が意見や批判の発言の範囲内である限り、その発言の使い方が痛烈であったために他の議員等の正常な感情が反発しても、無礼の言葉には該当しないことである。
なお、無礼の言葉として認められた事例として、①昭和25年9月5日の札幌地裁において認定された「議会の無能を暴露するもの」、②昭和28年1月7日青森地裁において認定された「私は諸君のように利権が欲しくて県会議員になつて来ておるのではない。土建業者でもなければ馬喰〔ばくろう〕でもない」、③昭和54年3月30日青森地裁で認定された「女の腐ったみたいで、水の上に浮かぶ浮き草のよう」、「ペテンにかけて」、「悪代官の典型的見本のようなもの」等が挙げられる。
5 他人の私生活にわたる言論の禁止の意義
国民には憲法13条の補充的な権利としてプライバシー権が保障されており、みだりに私人としての生活を暴露され、他人から干渉されることは許されるべきものではないとされている。
地方自治法132条で他人の私生活にわたる言論を禁止しているのは、議事に関係のない個人の問題を取り上げて議論することは許さず、また公の問題を論じていてもその発言が職務上必要な限度を超えて個人の問題に立ち入って発言されることを許さないとする規定であるといえる。
なお、他人の私生活にわたる言論として認定されたものとして、青森地裁昭和54年3月30日の判決で、議員と市長との私的な取引関係や金銭の授受関係につき市長の不誠実な態度や違法な行為を具体的に指摘する言動は、他人の私生活にわたる言論に該当するとされた。
6 議員の発言手続
議会に出席する者が発言しようとする場合には、議員だけでなく執行機関もすべて発言に当たって標準市議会会議規則50条の規定に基づき、議長の許可を得なければ発言することはできない。
この発言に対する議長の許可は、地方自治法104条に基づく議事整理権によるものであり、無秩序な発言による議事の混乱を排除し、議事の円滑な運営を確保するためのものである。
つまり、議会における発言は議長の議事整理権の範囲内でしか行うことができない。
なお、議員等が議長から許可された発言については、許可を受けた議員の発言が保障されているため、当該議員が発言している最中に他の議員等が発言を申し出ても、新たに発言を申し出た議員の発言を議長が許可することはできない。