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2016.07.25 議会改革

第3回 地方分権改革の動向と住民自治の課題

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3 もう一歩:地方政府としての自治体

 地方政府について考えたい。憲法にも、自治体の組織運営を規定する法律(特に地方自治法)にも、地方政府という用語だけではなく、地方自治体(自治体)という用語は見受けられない(1)。これを指摘するのは、相変わらず「地方公共団体」が一般的な用語であることへの違和感である。
 法律用語を度外視して「地方公共団体」(local public entities)といえば、自治会・町内会、NPO法人その他の公益法人なども含めて理解できるのではないだろうか。また、憲法第8章のタイトル「地方自治」(local self-government)とその個々の条文における地方公共団体のニュアンスには大きな開きがあるのではないだろうか。さらに、地方分権改革の進展を考慮すれば、地方公共団体とは異なる用語が必要である。本連載では一般的に用いられている語である「地方自治体」を用いることが多いが、同時に「地方政府」という用語も重要であることを指摘しておきたい。なお、今日広がりつつある地方政府は、憲法の規定の中にそれを構想できる仕組みが配置されている。

【日本国憲法前文(抄)】
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する
 We, the Japanese people, acting through our duly elected representatives in the National Diet, determined that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of peaceful cooperation with all nations and the blessings of liberty throughout this land, and resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish this Constitution. Government is a sacred trust of the people, the authority for which is derived from the people, the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of which are enjoyed by the people.
(下線筆者)

 国政では、国民代表制原理が採用されていることが確認できる。本連載で指摘するように、国政の議員(国会議員)は、国民全体の代表であり、選挙区の代表ではない。それゆえに、リコールは制度化されない。また、国政の構成の仕方は、信託によっている。これは、J. ロックの発案が、アメリカ独立宣言を経由し、それが海を渡って日本国憲法にも結実したものである。ここで留意していただきたいのは、政府(government、日本語では「国政」)は国民の信託で成立するという構成原理である。
 憲法第8章のタイトルである地方自治の英訳は、local self-government(地方(自律)政府)となっている。地方自治体も、もう1つの政府であること、そうであるならば住民の信託で地方政府が成立する構成原理も挿入されていると考えることもできる。だからこそ、国政とは異なり、地方政府が住民の信託に応えない場合、リコール制度によりそれを取り換えることもできると読める。まさに、ロックの信託論(抵抗権・革命権に連続する考え方)は、国政というよりも地方自治(地方政府)で再生されている。
 ただし、このような二重信託によって地方政府を住民が創出したとはいえても、中央政府から独立した団体とまではいえない(憲法の地方自治の規定参照)。地方分権改革によって中央集権時代の上下主従ではなく、対等協力関係になっている。政府間関係(中央政府と地方政府の関係)こそが問われねばならない(2)

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