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2016.07.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その13)

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 これまで12回にわたり、総務省に設置された「地方議会に関する研究会」の最終報告書である『地方議会に関する研究会報告書』(以下『報告書』という)を検討した。前回は、「第Ⅳ章(1) 多様な層の幅広い住民が議員として地方議会に参画するための方策」の「第2節 勤労者等の立候補を促進するための制度環境の整備 (1)議員のなり手の確保」の検討をした。今回も引き続き『報告書』に沿って、「(2)柔軟な議会運営の工夫」から論じていこう。

議員のなり手と議会運営

 『報告書』では、多様な人材が議員として活動することを容易にする観点から、第29次地方制度調査会答申の内容が紹介されている。例えば、毎週定期的に会議を開催するという議会運営が触れられている。あるいは、基礎的自治体の議会においては、柔軟な議会運営を可能とする要請が高いことから、勤労者が議員として活動することを容易にするため、夜間・休日等に議会を開催する工夫が考えられる、ともいう。2012年の地方自治法改正では、すでに多様な層の幅広い住民が議員として参画できる議会の実現や議会審議の充実・活性化といった観点から、通年会期制(地方自治法102条の2)が創設されたという。
 『報告書』では、実際の開催状況についての記述がある。すなわち、市区議会では、休日等議会は19団体・24日、夜間議会は2団体・2日、町村議会では、休日等議会は32団体・44日、夜間議会は19団体・32日だという。また、通年会期制は、1県4市8町村だというが、定例会を条例で年2回と定めているのは2県11市22町村だという(2014年1月現在)。その意味では、制度的には夜間・休日議会も通年会期も可能ではあるが、必ずしも広まっているとはいえないかもしれない。『報告書』でも、「これらの制度を活用した柔軟な議会運営の取組が行われることが期待される」としている。

従来の議会運営

 従来の、ある意味で今日の、平均的な議会運営は、年4回の定例会を数日から数週間の会期で開催し、平日の日中の時間に開催するというものである。通常、3月、6月、9月、12月頃である。3月定例会は2月中に招集すれば、それだけ会期は長くなる。ともかく、年度内の予算審議を想定すると、どうしても3月末はカバーしておかなければならない。それ以外も、補正予算の審議の必要性があるから、時々は開催しなければならない。また、11月末日現在で決めるべき事件を審議するには、12月定例会を11月末に招集することになることもある。
 なお、4月に統一地方選挙がある関係から、5月に臨時会を開催する慣行も多い。これは、本来4年に1度でよいのであるが、議長などの議会の役職が1年程度で交代する慣行も多いので、結果的には5月の臨時会が通例化している。
 大相撲が年間6場所で90日の開催であるが、その意味でいえば、自治体議会は「4場所開催」というものである。とはいえ、相撲取りは本場所開催以外の時期は遊んでいるわけではなく、稽古や地方巡業をしている。議員も、定例会・臨時会が開催されている時期以外にも、遊んでいるとは限らない(遊んでいる場合もある)。地元の政治活動や政策の勉強、あるいは本業の仕事などをしているわけである。
 こうした議会運営の慣行は、日中の時間帯に、ある時期に集中的にまとまった時間をとれる、というなり手を想定している。結局、ある程度、自分の時間を調整できる自営業者又は専門職か、年金生活者か、あるいは議員専業者である。ただし、市町村議会議員は議員専業が少ないので、結局、自営業者か年金生活者ということになる。「フリーター」=非正規労働者は、時間を自由に合わせられると思われるかもしれないが、実態は逆であって、使用者側が時間を自由に設定できるだけであり、フリーター=非正規労働者側は、呼び出しに応じて臨機応変に仕事に行かなければならないので、時間の融通を自分で差配することはできない。

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