2016.07.11 政策研究
【セミナーレポート】空き家対策への自治体の取組はどうあるべきか〜自治体独自の条例制定で解決を~
事例報告
さらに、京都市行財政局総務部法制課長の岡田博史氏より、『京都市「空き家等の活用、適正管理等に関する条例」取組み』として、京都市における対策について事例報告がなされた。空家法制定前にすでに制定のあった空き家条例の考え方、さらに空家法を踏まえてどのように条例改正を実施したか等につき、措置の内容と対象を図解した資料や条例の新旧対照表を用いて解説された。
パネルディスカッション
セミナー後半では、北村喜宣氏、岡田博史氏及び東京大学法学部教授の金井利之氏、国立市行政管理部法務担当課長の中村さゆり氏の4名がパネリスト、幸田雅治氏がコーディネーターとして登壇し、パネルディスカッションが行われた。
空家法は必要であったか? 国は何をするべきであったか? 今後自治体はどのように対応をしていくべきか? などの問題提起に対して、「地方分権後の自治体の条例制定権拡大を踏まえて、合憲的な解釈論をとっていくべきである」、「国は民事の基本を定め、所有者の特定や手続が煩雑であることを改めるような対応が期待される」、「自治体が条例制定する範囲を拡大することにより負うことになる法的リスクはどのように考えるべきか」など、活発な議論が交わされた。
さらに、今回の空家法のように議員立法という形で国会に法案が提出される場合には、通常の内閣提出法案のような審議がなされない場合もあり、その動向や内容に自治体職員は注視した方がいいといった指摘や、「国の施策がそもそも一方で新築を奨励し、一方で空き家対策を事後的に講じるという矛盾したものとなっており、空き家問題の抜本的な解決には、住宅総数管理の導入など、国がマクロ的な観点から施策を考え直す必要があるのでは」など様々な意見が挙げられた。
ディスカッションの最後には、制定する必要のなかった空家法ではあるが、自治体ごとのニーズや行政のリソースに応じ条例により補い、ツールとして活用することは有効であること、また弁護士等、法律の専門家が自治体で果たせる役割は大きいとの話があった。
地方分権による自治体の条例制定権の拡大によって、自治体が独自に地域の実情に合わせて政策を実施していくことが可能となり、実際、空き家問題への対応として、個別の課題を踏まえて独自にきめ細やかな条例を制定し、対策を進めている自治体も出始めている。空き家問題にとどまらず、今後自治体が抱える課題に対して効果的な施策を検討する上で、法律の知識は必要不可欠となっており、全国の自治体では弁護士資格を持つ職員が毎年増えているとの報道もあるが、今後もその流れが続いていくものと考えられる。