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2016.06.27 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その12)

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議員のなり手としての行政職員

 もうひとつのタイプの「勤労者」が、行政職員である。特に行政職員は行政の手の内に精通しているから、そうした人材が議員になれば、行政職員や執行部と充分に張り合える可能性が高まることが期待される。実際、住民や住民運動で行政から煙たがられるのは、国・自治体を問わず、行政の内情を知っている行政職員である。特に自治体にとって、しばしば国家公務員などはクレーマーにほかならないこともある。
 現状では、公務員の立候補制限や、議員と行政職員の兼業禁止などによって、行政職員がそのままで議員のなり手となることは考えられていない。あくまで、行政職員が議員になろうと思えば、退職するしかない。当然、そのようなリスクを冒すことは相当のハードルであるから、なり手は限定される。
 行政職員は政治家の判断を受けて、そのもとで仕事をすべき人間であるから、いわば、議員は行政職員の間接的な上司である(首長が直接の上司である)。したがって、上司と部下を兼ねるのは筋が通らないから、行政職員である以上、議員にはなれないというのも、充分に理解できよう。とはいえ、何でもかんでも禁止すべきなのかに関しては、区分けが必要である。
 第1は、議員に当選したら上下関係になるから問題だとしても、立候補段階から制限する必要があるか、という問題である。現行制度では、職員が立候補した時点で失職になるが、この規制を緩和する議論はありうるという意見が『報告書』では紹介されている。
 第2は、別の団体であれば上下関係にはならないというものである。例えば、A市職員が、住んでいるB市の議員になることである。水平的な別団体であれば、上下関係にはなり得ない。いまひとつは、X県職員がY県内のB市の議員になることである。これも斜めの関係なので、上下関係にはならない。
 第3は、X県職員がX県内のA市の議員になることである。X県議になるとX県職員の上司になるが、X県とA市は別団体であるから、A市議であれば上下関係にはならないかもしれない。もっとも、X県はA市に補助金を交付することなど利害関係が発生する場合があると、『報告書』では指摘されている。もっと露骨にいえば、X県はA市の「上級団体」なのだから、「上司」であるという発想が隠れているかもしれない。とはいえ、基本的にはX県とA市は別団体である。また、X県職員の仕事はA市に関わる仕事だけではないので、A市に関わる仕事だけしなければよいともいえる。
 第4は、A市職員がX県議になることである。これも上下関係といえば上下関係であるし、別団体といえば別団体である。また、A市がX県の「上級団体」として行動する可能性は、上記の第3のタイプよりは少ないであろうから、より許容されやすいとも考えられる。

【つづく】


(1) 『報告書』そのものに忠実に表現すると、「Ⅳ」とローマ数字が裸で記載されており、「第Ⅳ章」という表記ではない。しかし、本稿では、単に「Ⅰ」「Ⅱ」……では分かりにくいので、章立てとみなして、「第Ⅰ章」「第Ⅱ章」……と表記する。その下位項目は「1」「2」……であるが、「第1節」「第2節」と表記する。さらに、その下位項目は、(1)①となっている。

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