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2016.06.27 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その12)

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議員のなり手として深く考えられない若者

 同じく若者も、必ずしも正面から、なり手としては考えられていない。上記の推論からすれば、若者を議員にリクルートすることは、単に非正規・有期・ワンコール呼出しのあるワーキングプア・ワンコールワーカーの一種への勧誘にすぎず、若者のためにもならないという判断があるのかもしれない。実際、『報告書』では、「町村議会においては……議員報酬が低く、意欲のある若者が専業議員として参画できない状況がある」という指摘だけが紹介されている。つまり、このような劣悪処遇の仕事に、将来が有為な若者を導くのは、本人のためにも、日本社会全体のためにもならないかもしれない。
 ただ、逆にいえば、あまりに若者の雇用状況がブラック化したために、劣悪な経済報酬の町村議員の仕事も、派遣で悲惨な状況にある若者にとってみれば、実は魅力的な職業である。議員は4年の有期雇用であるが、逆にいえば、4年間は雇用が保障されるという、派遣切りや雇止めの恐怖に慄(おのの)く若者から見れば、むしろ好ましい仕事である。中年の正規職の人から見れば魅力がなくても、多くの若者から見れば魅力的かもしれない。
 とするならば、被選挙権を引き下げるだけで、相当の若者雇用の機会になるわけである。つまり、議員のなり手を確保することにはつながるであろう。もっとも、こうした「デモシカ」議員が増えることが、住民や自治体にとってプラスかどうかは分からない。また、次々に若者が議員を目指せば、今の若者も数期経るうちに若者ではなくなり、中高年の雇止めに直面するようなキャリアしか描けない。とすると、若者を「間違った人生行路」に勧誘することには、慎重にならざるを得ないともいえる。

議員のなり手としての民間被用者

 こうして、『報告書』で残されたのが被用者(サラリーマン)である。『報告書』では「勤労者」と表記されている。要は、会社勤めをしながら議員になれれば、担い手は増えるだろうということである。もっとも、正規雇用の量が縮小し、残された数少ない正規職員は過重労働を強いられている今日において、こうした被用者が議員の担い手となれるかは、疑問があろう。「勤労者」には、非正規・派遣労働者をもイメージしているのかもしれないが、こうした人は、ある意味で勝手に議員活動をできるともいえるが、逆に、仕事があるときに休むと仕事をもらえなくなる以上、議員活動などはとてもできないだろう。『報告書』は、日本型終身雇用が存在していた1990年代以前の郷愁を前提に議論を組み立てているのかもしれない。その意味では、現状認識がずれている可能性もある。
 ともあれ、民間企業の「勤労者」が議員になろうと立候補するには、あるいは、立候補して当選して議員活動をするには、休暇・休職などを企業が認めなければならない。個別企業としては、自社だけで、議員立候補あるいは議員活動で勤労者が休暇・休職をされることは困るであろうから、労働法制その他で一律的に導入するしかない。しかし、その前提は社会や世論の理解であり、『報告書』は第29次地方制度調査会答申を引いて、「議会の活動を社会全体で支えていくべきであるという意識の醸成」が重要であると考えているようである。その上で、労働基準法での被選挙権の行使に関する環境整備についての検討が必要だと考えている。しかし、非正規雇用が5割に近づきつつある現代において、どのように世論をつくっていくのかは、論じられていない。

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