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2016.06.27 議会改革

第2回 地方自治の特徴――二元的代表制と二層制――

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 第31次地方制度調査会答申(2016年)では「住民に身近な行政サービスを総合的に提供する役割を有する市町村」という文言があるが、この「総合的」の意味は、単独で担うべきということではない。そもそも、「総合」の意味の逸脱としての「総合的な行政主体」論は採用されず、その是正が行われている。「あらゆる行政サービスを単独の市町村だけで提供する発想は現実的ではなく」という認識に立っている。ここから、自治体間連携・補完(広域連携)や地方独立行政法人などの外部資源の活用が強調されている。
 ともかく、総合性の意味は平成の大合併で変容した意味が是正されるに至っている。

~理解をさらに深めるために~
① 二元制、二元代表制、二元的代表制(機関競争主義)と類似した用語がある。単に議員だけではなく首長を直接住民が選挙することを二元代表制と呼ぶことも多い(これだけでは、本連載では単に二元制)。現行自治法に基づく制度を二元代表制と呼ぶこともある(総務省等)。本連載では、議会・議員と首長とが住民参加を充実しながら、それぞれが政策競争を行うことを強調して、二元的代表制=機関競争主義と呼ぶ。
② 直接請求制度は重要であるとしても、リコール制度については、ハードルが高くないか、条例の制定改廃については、議会の議決にすべてを委ねることでいいのかどうか、といった課題もある(住民参加・協働の回において詳述)。
③ 「特別法の住民投票」は、今日死文化しているといわれるが、その理由には、「1つの」という規定に収まらない対象範囲の拡大が挙げられている(首都圏整備法等)。同時に、首都建設法のように多くの反対票が出たことも理由に挙げられるのではないだろうか。ちなみに、その首都建設法では、「平和国家の首都東京」(1条)が明記されている。日本の首都は事実上の首都といわれるが、法律で明記し、しかも住民投票で決めている。興味深い歴史である。
④ 補完性の原則は、ヨーロッパの長い伝統に起源を持つものである。EUの組織原理として、承認されている。「ヨーロッパの諸国民の間にますます緊密化する連合を創設し続けることを決意し、その連合においては補完性原理に従って可能な限り市民に近いところで意思決定を行うこと……」とうたっている(マーストリヒト条約前文、1992年)。
⑤ 憲法制定過程において、「地方自治」の章の中に、それこそ自治体の憲法である憲章(チャーター)制定権の議論もあった。今日の自治体の憲法を考える際に、その想像力を喚起するものである(自治・議会基本条例の回において詳述)。


(1) 一般にこれを根拠に、二元代表制といわれている。本連載では、3つの特性を合わせて二元的代表制として議論している。特に、この3つの特性を過程として理解したものを、機関競争主義として定義付けている。
(2) さらに町村では、議会を置かずに有権者による住民総会を設置することができる(自治法94)。憲法で議会を設置することが明記され(憲法93)、自治法でもそれを再確認している(自治法89)にもかかわらず、例外を認めている。歴史上偶然とはいえ二元的代表制ではない住民総会という政府形態を採用することが、明確に法律に書き込まれている。つまり「町村は、条例で、第89条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」(自治法94)。自治法の下では戦後の一時期、町村総会が設置されたことはある(東京都宇津木村(現八丈町))。財政的な理由である。今日議会を設置せず住民総会を設置している自治体はない。
(3) 第27次地方制度調査会答申(2003年11月13日)では、次のように指摘されている。「今後の我が国における行政は、国と地方の役割分担に係る『補完性の原理』の考え方に基づき、『基礎自治体優先の原則』をこれまで以上に実現していくことが必要である。(中略)基礎自治体の規模・能力はさらに充実強化することが望ましい」。なお、地方分権推進委員会最終報告(2001年)においても明確にうたわれている。
(4) 「『総合的』とは、関連する行政の間の調和と調整を確保するという意味の総合性と、特定の行政における企画・立案、選択、調整、管理・執行などを一貫して行うという総合性との両面の総合性を意味する」(松本 2013:14)も参照。

〔引用文献〕
◇阿部斎・内田満・高柳先男編(1999)『現代政治学小事典〈新版〉』有斐閣
◇江藤俊昭(2015)「基礎自治体の変容――住民自治の拡充の視点から自治体間連携・補完を考える――」日本地方自治学会編『基礎自治体と地方自治』敬文堂
◇小林武・渡名喜庸安(2007)『憲法と地方自治』法律文化社
◇松本英昭(2013)『新版 逐条地方自治法〈第7次改訂版〉』学陽書房

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