2016.06.10 議会改革
第26回 どの大学と連携協定を結ぶべきなのか?
実務の輝き
確かに、議会審議に役立つという意味では、法律や経済などの社会科学系の学部のある国立大学かもしれません。条例案の作成などに当たっての「専門的知見の活用」でも、頼りにできそうです。しかし、大学との連携はそうした典型的な形ばかりではありません。それぞれの議会の「助けてほしいこと」と大学の「できること」がマッチすれば、それこそが求められる連携ということになります。
例えば、熊本県における大津町と尚絅(しょうけい)大学の取組です。尚絅大学は、文化言語学部と生活科学部からなる大学です。大津町議会は、そのうち文化言語学部と連携協定を結び、議会だよりの編集の手伝いをしてもらっています。若年人口が増えている大津町ですが、レイアウトや文章に大学生の意見を取り入れることで、若年層にも読んでもらえる議会だよりづくりを目指しています。また、古賀市議会は市内の福岡女学院看護大学とパートナーシップ協定を締結しました。講師の派遣などを通じて、「健康に関する」議会の政策提言力を向上させるねらいがあります。さらに、これは連携協定という形をとっていませんが、相模原市議会は、市内にキャンパスのある女子美術大学に依頼して、市議会の活動を紹介するマンガをつくり、ホームページ上に公開しています。
王道ともいえる社会科学系学部を含む総合大学との連携でも、その深化が見られます。山梨県昭和町と連携する山梨学院大学、さいたま市議会と連携する埼玉大学では、学生が具体的な政策を議会に提案しています。連携の年月を通じた信頼関係の高まりが背景にあるのでしょう。また、新しい取組としては、今年3月に結ばれた関東学院大学と横須賀市議会との間の包括的パートナーシップ協定が注目です。議員と学生・教職員からなる「政策研究会」を立ち上げ、政策検討の場とする予定です。また、議員が大学で講義を聴講することも計画しています。調査機能の充実という意味では、大津市議会と龍谷大学との連携も目を見張ります。大学図書館を議員が利用することができ、しかも、議員や議会局(議会事務局)職員がレファレンスサービスを受けることができるというものです。すでに、今年の4月より実施されています。
連携のメリットとして、議会側は議員研修への講師派遣をしばしば挙げますが、これについても興味深い先進事例があります。所沢市議会は、平成28年2月に市内にキャンパスを有する早稲田大学と「連携に関するパートナーシップ協定」を結びました。これを機会に、研修計画や政策提言について審議を行う審議会を議会の附属機関として設置しました。そして、その審議委員に、市内の大学の研究者を加えているのです。上手な「取組」ならぬ「取込」として注目されます。
○所沢市議会政策研究審議会条例
(設置)
第1条 議会と大学等研究機関との連携を通じて議員研修の充実強化を図り、もって更なる議会機能の強化と議会の活性化に資するため、所沢市議会基本条例(略)第23条の規定に基づき、所沢市議会政策研究審議会(以下「審議会」という。)を置く。
提言
卒業以来30年さんの議会でひとつ気になったのは、「議会基本条例の制定を終え、今度は大学との連携を模索しているところです」というくだりです。大学との連携協定を結んだだけでは意味がありません。連携を通じて結果を形にすることが必要です。大学からすれば、議会との連携は研究を実社会へ反映する機会ともなりますが、さらに、その結果が注目されると、大学にとってもよいPRになります。ですから、大学側からすれば「連携にふさわしい議会かどうか」ということを常に意識しています。特に、地縁の薄い議会からの申出にはそうした意識がより働くことでしょう。どの大学を選ぶかというよりも、「その大学とどんな夢を実現することができるか」といったことが議会にとって大切になる理由がそこにあります。
結果を残す議会は、大学からモテモテです。現在の大津市議会がそうでしょう。立命館大学、龍谷大学、同志社大学と連携協定を結んでいます。連携する大学が多い分、議会の懸案を支援してくれる研究者を見つけやすくなります。
見る夢の数だけ連携大学があってもいいのです。ただ、それを実現するだけの力量を議会が備えなければなりません。いろいろな面で自治体議会の力量が問われる時代となっているといえます。