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2016.04.25 議会改革

名古屋市議会――議員報酬の扱いをめぐる対立

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いくつかの論点

 ① 第1は、議員の報酬年額(議員報酬+期末手当)を、市長と同じ800万円にしてきたことである。報酬上の扱いを首長と議員を同じにしている自治体はない。しかも、議長、副議長の役職加算もなしというのは珍しい。選挙で選ばれる首長と議員の報酬上の処遇を同じにするというのは、公選職として同様の扱いをしているという点で興味深いが、両者の責任と任務の違いを度外視しているという点ではにわかには理解し難い。市長と議員の公費支給額を同じにするということは、市長職の重要さをおとしめているとも、議員活動の価値を高く評価しすぎているともいえる。同様に、議長と議員の報酬を同一にすることも両者の責任と任務の違いを無視していることになり、報酬のもともとの意味(職務遂行の対価)をゆがめていないかどうか問題になる。
 ② 名古屋市特別職報酬等審議会条例では、「議会の議員の議員報酬の額(中略)について審議するため、市長の附属機関として、名古屋市特別職報酬等審議会を置く」(1条)とし、「市長は、報酬の額等に関する条例を議会に提出しようとするときは、あらかじめ、当該報酬の額等について審議会に諮問するものとする」(2条)としている。条例の趣旨に照らせば、議員報酬額の決定に際しては特別職報酬等審議会(以下「審議会」という)の意見を聴き、市長が提案するというルールになっている。
 議員報酬の妥当額は、審議会が2006年1月23日に、当時の松原市長に答申し、それに基づいて制定され議員報酬条例で決められた月額99万円となっている。これが制度値である。これを変えるというのであれば審議会にかけるのが筋である。議員報酬や定数を検討する名古屋市議会「議会改革推進協議会」は、2015年10月、議員報酬の適正額を審議会に諮問するよう市長に申し入れたが、市長は拒否している。そこで、自民公3会派は報酬半減を規定している特例条例の見直しを進めた。今回の特例条例の改正は、審議会の答申を基に定められた報酬額を、審議会の議を経ずに、議会自ら15%削減することを決めたということである。議会側(多数会派)の政治的判断である。
 ③ もっとも、報酬額を基準にして算定される期末手当については、削減した報酬額ではなく、本則の額を使い減額しないとした理由は判然としない。もともと、地方議員に対する期末手当の支給は、1956年地方自治法改正の折、国会議員に対し期末手当が支給されていることに鑑み、地方議員に対しても条例で特に規定するならば支給することができるとしただけである。報酬額は減らしながら、それと連動しているはずの期末手当は減額しないというのは「お手盛り」の感を与える。これも政治的判断というのであろうか。
 ④ 議員報酬を特例措置として月額84.15万円とした理由は、他の政令市に比して最大の削減率15%を採用したものだという。15%減は、名古屋、横浜、京都、大阪、神戸の5大都市の中で、確かに大阪市の12%減を上回っている。これは審議会が算定した本則の月額99万円は多すぎると判断したことになるが、その理由は何か定かではない。本則に戻しにくいどのような事情があると判断したのであろうか。
 ⑤ 報酬引上げと議員定数削減がセットになっていることをどう考えるか。定数を75から7減の68に削減することは、他の政令市の削減状況と比較すれば思い切った決定であるともいえる。16選挙区(行政区)のうち7区が削減対象になる。7減しても議会活動には支障がないと判断したのであろうか。名古屋市議会の定数68の妥当性はどのように説明するのであろうか。もっと減らせといわれたらどうするのであろうか。7人分の議員報酬が節約できるという財政上の利点が考えられているかもしれないが、名古屋市議会の議員定数は何人にするのが適切であるのか再度検討されてしかるべきであろう。
 ⑥ これまでの報酬年額800万円は、実際の議会活動・議員活動の対価としては十分なのか不十分なのか。報酬年額は所得であり、何に使ってもよいことになっている。使途が限られているが政務活動費も支給されている。この5年間、800万円の報酬年額では生活費・議員活動費を賄えず、ほとんどの議員の家計は実質赤字が出ているのであろうか。報酬年額以外に収入がなかったかどうか議員の資産公開をしていないから分からない。議員の報酬年額は何を根拠として、どのような手続で決めるのが適切なのか、再考の必要がありそうである。今回の改正を名古屋市民はどう見ているのであろうか。

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