地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2016.04.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その10)

LINEで送る

現状への弁明は可能か?(2)―構成がゆがんでも意思はゆがんでいない?―

 第2は、選挙の過程で、議員構成が住民構成と乖離していたとしても、「議会の意思と住民の意思が乖離しない」のであれば問題ないといえる。そのために、「住民の幅広い意見を把握するための議会及び議員の活動を行うことにより対応する」ことはできるだろう。理屈からいえば、男性議員が男性の意見のみを反映し、女性議員が女性の意見のみを反映する、というわけではない。有権者はほぼ半々であるならば、数の多い男性議員は、必然的に女性票を集めていることが推測される。また、数の少ない女性議員は、理論的には女性票だけで当選できるかもしれないが、現実には男性票の方が多いかもしれない。そもそも、有権者の投票行動調査によって推定することはできるが、制度的には秘密投票なので、確証を持つことはできない。したがって、議員構成は、ほとんど問題はないということもいえる。
 もっとも、この理屈をいえば、住民有権者が自由に投票しているのであれば、住民構成と全く乖離しても問題ないということになる。端的にいえば、議員は全員外国人であっても、つまり被選挙権は外国人であっても、有権者が日本人であれば問題ない、ということになる。しかし、これは直感に反するだろう。やはり、民主主義は治者と被治者の同一性という自己統治が重要である以上、治者側である議員が全員外国人ということは、異質の他者による統治となり、自己統治とはいえない。仮に、この外国人議員が、日本人の投票で当落が決まる以上、日本人有権者の意向に従うはずであっても、である。
 同様に、男女からなる住民という被治者に対して、治者という議員が男性だけであれば、少なくとも、女性に関しては自己統治はなされていないことになる。つまり、単に住民の意思を実体的に反映すればよいというだけでなく、自己統治あるいは治者と被治者の一致という形式は不可欠であるという側面もある。特に、議員が住民の意向を必ずしも反映して意思決定できるとは限らず、そうであるときに統治の正統性を確保するには、治者と被治者の同一性が、少なくとも、その近似性は求められるともいえる。

【つづく】


(1) 『報告書』そのものに忠実に表現すると、「Ⅲ」とローマ数字が裸で記載されており、「第Ⅲ章」という表記ではない。しかし、本稿では、単に「Ⅰ」「Ⅱ」……では分かりにくいので、章立てとみなして、「第Ⅰ章」「第Ⅱ章」……と表記する。その下位項目は「1」「2」……であるが、「第1節」「第2節」と表記する。さらに、その下位項目は、(1)①となっている。
(2) 例えば、2011年4月の統一地方選挙で、石川大我氏が豊島区議に当選し、2015年にも当選した。また、2003年4月の統一地方選挙では、上川あや氏が世田谷区議に当選し、現在4期目である。
(3) 例えば、「筆談ホステス」で著名な斉藤里恵氏が、2015年4月の統一地方選挙で、北区議に当選した。しかし、例えば、既に千一氏は鎌倉市議を4期務めている。ホームページによれば、「全身にアテトーゼ(不随意運動・凝縮)を持った出生時からの脳性麻痺により、手足、言語に障がいを持つ」とされる(http://www.senhajime.jp/intro/index.html#A 2016年4月11日閲覧)。
(4) ただし、国会議員では障碍を持った議員はいないといわれる。しかし、親族や子どもに障碍を持った議員はいる。また、乙武洋匡氏が2016年の参議院選挙への自民党からの出馬が取りざたされていたが、現時点では立候補は取りやめとなっているようである。もっとも、本文で述べたように、障碍を持っている議員が、必ずしも障碍者の声を代弁するとは限らない。それどころか、政治家になるような障碍者は「強い」人である。「このように頑張れば、オカミの福祉に依存しないでも生活できる」というように、一部の「健常者」にとって都合のよい障碍者議員となり、むしろ、いない方がよいということもありうる。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る