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2016.04.18 政策研究

【フォーカス!】情報提供は適正だったのか

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

情報提供は適正だったのか

  熊本県を中心に大きな地震があり深刻な被害を引き起こしている。避難も含め長期化は避けられないが、まず初期の段階で、この地震から何を学ぶのかを考えてみたい。
 地震は4月14日午後9時26分、熊本県益城町で震度7、マグニチュード(M)6.5を観測した。最初に「熊本地震」と名付けられたものだ。気象庁によると、震源は深さ11kmと浅く、活断層で起きたタイプとなる。
 震度7を記録した地震は、1995年の阪神大震災、2004年の新潟県中越地震、そして2011年の東日本大震災を含めて4回目となった。最も大きな震度だっただけに、その後も震度6クラスなどの地震があったが、当初はこれで収束すると考えられていたはずだ。
 それが16日午前1時25分、熊本県、大分県でさらに大きな被害を出したM7.3の地震が起きた。その後、気象庁がこの地震を「本震」とし、震度7の地震を「前震」とした。誘発された地震の方が規模の大きい「本震」であることは、地震学の世界では珍しくないそうだが、メディア、住民も含めてそのことが十分に認識されていただろうか。
 気象庁が14日の地震の後の地震については、当初は「余震」と呼んでいたことからも分かるように、今後はだんだんと収まるとみていたはずだ。その結果、自宅に戻って16日の地震の被害に遭った人もいたかもしれない。
 結果論から言うことになり恐縮だが、気象庁の情報提供の在り方が適切だったのかどうか疑問だ。例えば、気象庁は「15日午後4時から3日間に震度6弱以上の余震が発生する可能性について20%、震度5強以上は40%」などと記者会見で解説している。多くの人もこれらの評価の言葉と、だんだん地震が小さくなっていった東日本大震災などと同じだと思って行動したはずである。
 そうでない可能性があるのなら、気象庁がもっと強く危険性を指摘すべきだったのではないか。阪神大震災を契機につくられた政府の地震調査研究推進本部による事前の地震の想定がどうだったのか。地震が起きた後の地震調査委員会の評価はどうだったのか。日本各地には活断層だけで約2千あると推定されている。同様なことがどこにでも起こりうるのか。これらも含めて検証を求めたい。
 このほか熊本地震を受けて検証すべき点を挙げておきたい。
 まず九州新幹線の脱線だ。中越地震では営業運転中の上越新幹線が脱線したことから、「脱線防止ガード」の設置などの対策が進められていた。熊本で脱線したのは、JR熊本駅から熊本総合車両所に向けて回送中の車両で、脱線防止ガードがない区間だったという。
 だが、活断層の位置や直下地震の発生を考慮すれば、全線で脱線対策を進めるべきだろう。活断層との関係も含め、対策区間の計画を見直すべきである。さらに、昼間で営業運転していた場合だと、どれだけの被害が出ていたかもシミュレーションすべきである。国土交通省、JR各社はこの脱線を深刻に受け止め、脱線対策の強化が必要か議論すべきだ。
 早朝に起きた阪神大震災、夜に起きた中越地震では被害の全体像の把握に時間がかかった。これらを教訓に夜間の発生であっても、自衛隊などが航空機を飛ばし、被害状況を調査することになっている。今回も自衛隊のヘリコプターなどが飛んだが、どれだけ被害像を把握できたのか。今後の対策に生かすためにも、情報の公開と、把握能力の評価もすべきだ。
 災害対策基本法に基づいて、地方自治体は高齢者ら「災害避難時の要支援者」の名簿を作り、サポーターをあらかじめ定めることになっている。隣近所やサポーターといった「共助」が機能したのか。それとも、この名簿を使うことで、消防や警察、自衛隊などがスムーズに救出できたのか。高齢社会では「共助」でなく、「公助」に頼らざるを得ない地域が増えている。今回がどうだったかによって、緊急時の広域派遣の規模も見直す必要があるだろう。

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