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2016.03.25 政策研究

【フォーカス!】人口減少、苦肉の策のオンパレード~第31次地制調答申~

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

人口減少、苦肉の策のオンパレード~第31次地制調答申~

  第31次地方制度調査会(畔柳信雄会長)は3月16日、安倍晋三首相に答申した。「人口減少社会に対応した地方自治制度」について安倍首相から2014年5月に諮問され検討してきた。
 答申の柱は、①連携中枢都市圏など地方自治体間の広域連携の拡大や窓口業務の外部委託、②首長が内部統制体制を制度化するとともに、住民訴訟や監査制度の見直し自治体による違法な公金支出の防止策を強化する―が柱となっている。
 前提は現在の人口動態が続けば2060年には人口が約8700万人にまで減ることや、2050年までに居住地域の6割以上で人口が半分以下になり、2割の地域では人が住まなくなるという現実だ。
 自治体消滅とも言える状況で、行政サービスを維持するのはかなり難しくなる。といって市町村合併が解決策とも思えず、自治体側のアレルギーも強い。そういう状況でできることは、医療や教育などの行政サービスを複数の市町村で協力し取り組む「連携中枢都市圏」など既存の枠組みを推進するしかない。
 強化策では、連携中枢都市に都道府県の権限を移譲することや、都市圏で発生する需要に対し適切な財政措置を取る。議会が専門の委員会を設置してチェックすることが考えられる。
 市町村間の水平連携が困難な地域では、都道府県が支援する垂直連携が有効となる。
 新しい点では「外部資源の活用」として、窓口業務などを民間委託することも提案した。複数の自治体で窓口業務を一つの組織、例えば、近隣市町村で地方独立行政法人を創設して特定の事務を処理してもらうことを指す。いずれにせよこれらは30次地制調の流れを受けた内容で、新しい発想は地方独立行政法人にとどまったと分析できる。目玉政策が浮かばず、苦肉の策のオンパレードとも言えるだろう。
 内部統制は「長自らが、行政サービスの提供などの事務上のリスクを評価、コントロールし、事務の適正な執行を確保する体制」を意味する。その方策としては、①マネジメントの強化、②事務の適正性の確保、③監査委員の監査の重点化・質の強化・実効性の確保の促進、④議会や住民による監視のための必要な判断材料の提供-が挙げられている。
 公金支出に関しては、自治体に対する監査制度の専門性を高めるため、地方議員の監査委員を置かないことを可能とし、監査委員の質を高める。また、係争中の住民訴訟については、地方議会が首長らへの損害賠償請求権を放棄することを禁止する。裁判所が支出の違法性を判断するケースを増やし、自治体側に緊張感をもたらす効果を狙った。
 今後、総務省は住民訴訟制度の見直しなどを盛り込んだ地方自治法改正案を秋の臨時国会以降に提出する。
 第31次地制調の答申は全体としては迫力不足だ。一つは首相の政治姿勢にある。道州制の導入、地方分権のさらなる促進といった発想は安倍首相には乏しく、どちらかといえば国家主義、中央集権体制の強化が前面に出るタイプの首相である。さらに地方創生や人口減少対策を旗印に掲げているとなると、その意向を忖度して人口減少への対応を中心にせざるを得ない。当面はこのペースでの地方制度の見直しが続くことになるだろう。
 一方、地方自治体の強化では、地方議会を機能させることが本丸である。議員定数を減らして報酬を引き上げるといったアイデアもあるが、各党の国会議員との関係もあり、簡単には議員の数も減らせない。市町村を中心に議員のなり手不足も深刻ということから、議会の強化の抜本策は打ち出されないままとなった。

▼主な資料
・答申
http://www.soumu.go.jp/main_content/000403436.pdf
 

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