2016.03.25 政策研究
イチからわかる! 予算編成と決算分析(下)
(3)資産老朽化比率の導入等
前述の「地方財政の健全化及び地方債制度の見直しに関する研究会報告書」において、公共公益施設の老朽化、劣化問題に対する認識について、「近年、我が国では公共施設等の老朽化対策が大きな課題となっているが、決算統計や健全化法における既存の財政指標では、資産の老朽化度合いまでを把握することはできなかった。一方、統一的な基準による財務書類を作成するためには、公表を前提とした固定資産台帳の整備が必要となるが、当該台帳には公共施設等の取得価額や耐用年数、減価償却累計額等が記載されているため、これらの情報を活用することにより、『資産老朽化比率』の算定が可能となる」と、次の「資産老朽化比率」を示しています。
資産老朽化比率=減価償却累計額÷(償却資産帳簿価格+減価償却累計額)
また、「資産老朽化」に対する対応については、報告書によれば、「地方公会計により把握される『資産老朽化比率』とは、具体的には、償却資産の取得価額等に対する減価償却累計額の割合のことであり、当該比率は公共施設等の除却・更新等により改善(低下)する。そのため、公共施設等総合管理計画を策定して公共施設等の統廃合・更新等を実施していけば、資産老朽化比率は改善していくこととなる。ただし、統一的な基準による地方公会計における耐用年数は原則として法定耐用年数であり、メンテナンス不足で損耗している場合等には耐用年数を短縮することが認められているものの、長寿命化対策を実施したとしても単純に耐用年数が延長されるわけではないため、資産老朽化比率が個別の公共施設等の使用可能年数を精緻に捉えたものではなく、あくまでも老朽化の傾向を大まかに把握するためのものであることに留意が必要である」として、「公共施設等総合管理計画を策定して公共施設等の統廃合・更新等を実施」することの重要性について指摘しています。
「公共施設等総合管理計画」を作成するに際しては、「ファシリティマネジメント」(Facility Management:FM)の観点より検討することが重要であるといえます。
この「ファシリティマネジメント」とは、「Facility(施設、建物、設備)」の「Management(管理)」と称されているように、運営管理する対象については、物的な「建物施設設備」そのものを対象としています。従来のビルマネジメントがビルメンテナンスを表している「建物設備管理」であるのに対して、ファシリティマネジメントは建物施設設備全体の価値を総合的な観点から高める管理手法、経営手法であるという点が、基本的に異なるといえましょう。すなわち、経営資源としての施設や環境を総合的に企画・管理して、施設設備に関して常に最適化すると同時に最有効利用を確保するための経営管理手法が、ファシリティマネジメントである、と定義されます。
ちなみに、青森県におけるファシリティマネジメント導入推進事業については、次のようなものが挙げられています(4)。
① 施設情報システムの整備
② 標準仕様書と積算基準の作成
③ 契約発注方法の適正化と群管理
④ 施設保全の業務支援
⑤ FM推進組織の基盤構築
⑥ 施設評価手法
⑦ 施設運営のアウトソーシング
⑧ 長寿命化と政策的減築
⑨ 施設再生と用途転換
いずれにしても、単純に公共施設の老朽化対策という観点からではなく、地域住民の福祉の向上、また産業の地域活性化、地域振興の視点から、公共施設整備のあり方について、総合的、複合的、多角的に、施設整備の推進とその保全・維持を考えていくことが重要です。