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2016.03.25 政策研究

イチからわかる! 予算編成と決算分析(下)

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4 自治体行財政運営の今後の課題

(1)新地方公会計の推進
 前述のとおり、平成27年3月31日時点における平成25年度決算に係る財務書類の作成団体(作成済み又は作成中の団体の合計)は、全団体の93.7%に当たる1,675団体で、このうち作成済み団体は全団体の69.3%に当たる1,239団体となるなど着実に作成が進んでいます。
 一方、固定資産台帳の整備状況については、「整備済」が332団体(18.6%)、「整備中」が844団体(47.2%)、「未整備」が612団体(34.2%)となっています。
 「今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書」(平成26年4月、総務省)によれば、現在、地方公共団体における財務書類の作成方式は、総務省モデルのほかに、東京都や大阪府等の方式があり、それぞれの作成方式の実績、評価及び課題については、次のように要約されています。
① 基準モデル:個々の取引等について発生の都度又は期末に一括して発生主義により複式仕訳を行うとともに、固定資産台帳を整備して財務書類を作成するモデルである。一定の地方公共団体において複式仕訳(期末一括変換)の導入が進み、固定資産台帳の整備等を通じて資産更新等の課題を明らかにすることができた点で意義があるものと考えられる。一方、特殊な財源仕訳を行うことによる複雑さやわかりにくさ等は課題として挙げられる。また、発生主義による複式仕訳を実施するための出納データの変換プログラム等が必要であり、一定の経費負担等がある。
② 総務省方式改訂モデル:地方公共団体の事務負担等を考慮して、公有財産の状況や発生主義による取引情報を、個々の複式仕訳によらず、既存の決算統計情報を活用して作成することを許容しているモデルである。総務省が提供しているワークシートを活用して作成が可能であり、事務負担や経費負担等に配慮がなされている。このような簡便な方法での作成を可能としたことにより、多くの地方公共団体で財務書類の作成が進んだと評価できる。一方で、複式仕訳によらない場合には検証可能性が低いほか、固定資産台帳の整備が進んでいない場合には貸借対照表の固定資産計上額に精緻さを欠く等の課題が挙げられる。
③ 東京都や大阪府等の方式:発生の都度、複式仕訳を実施する方式であり、官庁会計処理と連動したシステムを導入することで、事務負担の軽減を図っている。また、会計別から事業別まで様々な区分で精度の高い財務諸表を作成することで、マネジメントに活用している例もある。即座に複式仕訳を確認できるため、財務諸表の作成が比較的短期間で済み、より早期の公表が可能である。東京都は平成18年度決算分、大阪府は平成23年度決算分から導入している。一方で、一定のシステムの導入経費負担等がある。
 また、同報告書には、「地方公会計整備の意義について」は、次のように意義が認識されています。
① 地方公会計は、発生主義により、ストック情報やフロー情報を総体的・一覧的に把握することにより、現金主義会計による予算・決算制度を補完するものとして整備するものである。具体的には、発生主義に基づく財務書類において、現金主義会計では見えにくいコストやストックを把握することで、中長期的な財政運営への活用の充実が期待できることや、そのような発生主義に基づく財務書類を、現行の現金主義会計による決算情報等と対比させて見ることにより、財務情報の内容理解が深まるものと考えられる。
② 個々の地方公共団体における地方公会計整備の意義としては、住民や議会等に対し、財務情報をわかりやすく開示することによる説明責任の履行と、資産・債務管理や予算編成、行政評価等に有効に活用することで、マネジメントを強化し、財政の効率化・適正化を図ることが挙げられる。
③ また、地方公会計の整備は、個々の地方公共団体だけでなく、地方公共団体全体としての財務情報のわかりやすい開示という観点からも必要があるものである。
 このような「『地方公会計』の整備、推進のためには、『複式簿記の導入』が不可欠である」とされ、同報告書には、次のように、明示されています。
① 地方公会計においては、検証可能性を高め、より正確な財務書類の作成を可能とするためには、複式簿記の導入が不可欠であると考えられる。一方で、現状においては、多くの地方公共団体が決算統計活用型の総務省方式改訂モデルを採用していることもあり、8割超の団体において決算統計データ等を活用した財務書類の作成となっており、伝票単位ごと等に仕訳を行っている団体は、発生の都度行っている団体が3団体(0.2%)、期末一括仕訳で行っている団体が255団体(14.9%)となっている。
② こうした状況も踏まえ、今後、すべての地方公共団体に適用する新たな基準に基づく財務書類の整備にあたっては、複式簿記を導入する意義を踏まえ、すべての地方公共団体で実施可能な方法によってその導入を進めていくこととする。
③ 「複式簿記を導入する意義」としては、次のa)及びb)がある。
 a) 帳簿体系を維持し、貸借対照表と固定資産台帳を相互に照合することで検証が可能となり、より正確な財務書類の作成に寄与すること
 b) 事業別・施設別等のより細かい単位でフルコスト情報での分析が可能となること
 このように、「企業会計(バランスシート)の視点」から自治体財政分析については、その必要性を認識して、①バランスシートの作成と財務状況の把握、②バランスシート作成を踏まえた主要な財政指標の分析、③行政コスト計算書・キャッシュフロー計算書の作成とその活用に努める必要があります。

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