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2016.03.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その9)

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人事ローテーションの問題

 また、せっかく研修をしても、すぐに別の部署に異動になってしまうのであれば、研修は効率的とはいえないだろう。この点、「議会事務局職員の在任期間を長くする」ということについては、『報告書』も言及している。加えて、OJTで身につくという立場に立っても、議会事務局に長く勤務することが能力を高めるからである。しかし、『報告書』は、「多様な行政分野を経験させるという職員の育成面での課題」などがあると指摘している。結局、短期人事ローテーションで執行部局に戻る現状を追認し、議会事務局の強化に消極的なのが、『報告書』のスタンスである。
 なお、「多様な行政分野を経験」することは、実は短期人事ローテーションでも簡単なことではない。例えば、役所人生40年としても、一職場4年として10課または10係しか経験できない。脈絡のない職場間の異動をするジェネラリストであったとしても、自治体の政策分野を総合的に経験できることはほとんどない。むしろ、政策分野全般を見渡せる職場は、行政部局においても必ずしも多くはない。財務・総務・企画など、限られた部署でしか「多様な行政分野を経験」できないのである。所管課に配属されれば、その課係の業務には習熟せざるを得ないが、「限られた穴だらけの行政分野を脈絡なくパッチワーク的に経験」したにすぎないこともある。むしろ、議会事務局は、全ての行政分野の議案に触れるという意味で、数少ない「多様な行政分野を経験」できる職場なのである。そういう意味では、議会事務局に長くいることにより、幅広い行政分野に通暁することは可能である。

議会事務局の共同設置

 『報告書』の第2の提言が、議会事務局の共同設置である。人員が増員できないときには、または、単独設置できないものは、スケールメリットを活用しようということである。『報告書』によれば、6町村で議会事務局が設置されていないという。
 また、2011年の地方自治法改正により、議会事務局及びその内部組織・補助職員の共同設置が可能になったという。そこで、例えば、法制担当職員を各議会事務局でそれぞれ置けないとしても、共同でならば置けるというわけである。職員の立場からいえば、複数の議会事務局に兼務しているようなものであるし、あるいは、複数の議会事務局に短時間勤務しているようなものである(クロス・アポイントメント)。
 もっとも、『報告書』自体が、各議会によって議会運営手法が異なり、また、開催時期は同時期であるため、共同設置すると実際には難しいことに直面するとも指摘している。議員の支援をする議会事務局が、共同で遠方にあるのでは、支援の便宜は悪いといわざるを得ないだろう。
 また、現実に人間の仕事を配分することを考えれば、総務課などの執行部職員が、その仕事時間の一部で、議会事務局の仕事を担う方が実際的である。単独の議会事務局長を置いても1人工の業務量がなく、0.3人工くらいであれば、庶務係長などが兼務した方が実際的なわけである。もちろん、二元代表制の観点からは、こうした「共同」化には、問題も指摘されよう。もっとも、執行部職員をいかに支援させるかが、現実的な意味での議員の支援機能の強化に重要であるならば、執行部と議会とで「共同」化した庶務係長を、いかに議会・議員の支援に振り向けさせることができるか、という政治力学と運用の手練の問題で対処することもできよう(2)。

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